Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

横須賀中央ふらつ記録(25)Rock City 頑張って営業中

 

先日の記事のコメント欄で「Rock Cityってまだやってますか?」というご質問をいただいたので、先日そのお店があるどぶ板通りまでふらっと行ってきました。

Rock City、頑張って営業中です!

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このお店は今から15年前(まだ20代・・・若い頃)に一度入ったきりなのであまり懐かしさなどはないのですが、そのたった一度の経験こそが、自分が横須賀という街に惹かれるきっかけになったとも思います。経験というほどのことでもないのですが、私が目にした光景は、年配の白人男性がカウンターで一人で飲んでいると、いつのまにか隣に若くも美人でもないフィリピン人女性がやってきて交渉開始し、そのままあっという間に消えてしまったというものです。
私と一緒にいたアメリカ人の青年が「あんなのどぶ板じゃ珍しくもなんともないよ」と教えてくれました。当時の自分は横須賀基地やその周辺の外国人の滞在ステイタスがよくわからなかったのであっけにとられましたが、今の自分であれば「空母が停泊している間だけ横須賀に単身赴任しているコントラクターが女性をホテルにお持ち帰りしたんだな」とすぐに分かったと思います。需要と供給のバランスが見事にとれている、コンパクトでchaosなミートマーケット=The Honch、最高ですよ!

Rock Cityのことを書いていて思い出したのですが、私がこの交渉を見かけた頃のどぶ板を象徴するのが、JUICY COUTUREのスウェット


 

1990年代後半は、パリス・ヒルトンをはじめとするセレブがこのブランドのスウェットスーツを着たことで日本でも人気が出たわけですが、当然これを着ている日本人女性は当時どぶ板でも多く目にしました。フィリピン人女性もかなり着ていましたが、なぜか彼女達はスウェットにヴィトンのバッグを合わせていました。
スウェットって難しいですよね。ある程度体にメリハリがないと部屋着っぽくなるし、顔立ち、髪型によっては体育の先生に見えてしまう。

 関連記事:年増のぶらぱんの垂れ尻を見ていてふと思い出したエクササイズ - Inside the gate

 
話は脱線しますが、イギリスのロックバンド・Oasisが全盛期を迎え、彼らのファッションが日本人の若い男性で流行っていた頃、私の母が困惑し「あの子達はお金がないからジャージを着ているの?」と真剣に私にたずねてきたことがあります(苦笑)。

ベースに暮らすアメリカ人達はmidnight snack難民になっているのではないか

セブンイレブン横須賀本町二丁目店。ベースで暮らすアメリカ人達がmidnight snackを調達するお店であり、ここで大量に氷結STRONGやらお弁当を購入し、E6以下の米兵は01:00amの門限を守るためにメインゲートへと戻っていくのですが、現在改装のため一時閉店していて驚きました。

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 このセブンがリオープンするまで困っているアメリカ人達は大勢いると思いますよ。中を覗いてみたら広さは今までの二倍になりそう。これにあわせて増員しないと店員さん大変だろうなぁ。

関連記事:【どぶ板】バーによって集まる人種が違います - Inside the gate

アジアン・ビューティー風メイクはもっと目元にパープルを取り入れてもよい(3)

 

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画像はNARSのフェイスブック公式ページからお借りしました

上記リンク先のページを見てこういう風にアジアン特有の切れ長の目を涼しげに且つ妖しく見せたいと思い、NARSのカウンターに立ち寄りました。
実際に試してみたら、妖しく見せることも、清潔感のある目元に見せることも、また優しげなラベンダーアイズを作り出すこともできる素晴らしいコンボだということに気が付いて購入しました。やはりオンラインで買うんじゃなくてちゃんとカウンターで買うよさってここなんですよね。

この二色で作れるグラデーションなのですが、実家の庭にある紫陽花を思い出させてくれました。特に雨露に濡れた時のそれ。

Hydrangea

NARSって異性ウケというよりはどちらかといえばモードな仕上がりになるイメージのブランドでしたが、NARSのアイシャドウでも和の優しさみたいなものが演出できるんだなという発見をした気分です。
もしもアメリカのアニメに出てくるアジアンみたいに切れ上がったラインを強調したいのであれば、M.A.C.のスモールアイシャドウのIN THE SHADOWSというブルーを締め色にもってきてもいいと思います。

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美しいアイシャドウを最大限に活かすために

「お客様の目の形の場合は・・・・」とブラシの選び方から動かし方まで美容部員さんがわかりやすく説明してくれて、#5329(VERONA)のような色を瞼につけたら一層はれぼったく見えるのではないか?という私の思い込みが間違えていることもちゃんと証明してくれました。彼女の説明を聞きながらメイクをしてもらっていて;

  1. 自分の目の形や骨格にあったブラシを持ち
  2. それらを正しく動かし
  3. プライマーは必ずつける

この3つを守らないと、どんなに美しいアイシャドウを買ってもまるで意味がないことを再認識しました。またブラシも「ここにこうあてて、横に滑らせるのではなく下から上へ動かしてください」とそれこそ魔術師のように、私の凹凸のない瞼の上でさっと動かしてくれたのですが、そうするとね、グラデーションがすごく自然になるんですよ。べたっとつかないからアイメイク頑張りました!っていう目元にならずに済む。

プライマーをケチりたくなったら思い出して。「絵具は白い画用紙の上に垂らすことで見たままの色が出る」という感覚

アイメイク用のプライマーって別につけなくても・・・と思いたくなりますが、私は他ブランドの美容部員さんに言われたひとことを聞いて以来必ずつけています。

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「絵具って透明のガラス板の上にぽたっと落とした時よりも、白い画用紙に落とした方が見たままの色がはっきりと出ますよね。だからプライマーをつけるんです。瞼の皮膚の色を補正してからアイシャドウを乗せると、アイシャドウの色がきれいにでます」

画像はここ数年愛用しているNARSのティンティッドスマッジプルーフアイシャドウベース
同ブランドの美容部員さんの話によるとつける順番としては1.スキンケア→2.これ→3.化粧下地→4.ファンデ→5.メイク開始の順だそうですが、私は寝坊した日は1.スキンケア→2.これ→3.アイメイク→4.あとはグロスをさっと塗る程度で行ってきます!って感じです。そして仕事の休憩時間にパウダーをたたいておしまい。一日中アイメイクがよれることもなく助かっています。
目の周りのシミやクマが気になる人はボビイブラウンのインテンシブスキンセラムコンシーラーがおすすめ。コンシーラーの魅力についてはフィリピン版「ファンデーションは使っていません」 - Inside the gateでも書いています。

美容部員さんのこのひとことに陥落し、買ってしまった逸品

さて、VERONAとSULTANで作った優しい目元ですが、「よろしければこの二色ととても相性の良いアイライナーがございますので、引いていかれませんか?」という悪魔のささやきが聴こえてたので、悪魔に魂を委ねました。

www.narscosmetics.jp

ナイトシリーズアイライナーと言って、夜空をイメージして作られたそうです。だから控えめではありますがパールが入っていてとても綺麗。私がつけてもらったのは#8025でコバルトブルーのパールが煌めくブラック、とあります。
下瞼にひくアイラインって不潔に見えたり、ケバく見えたりするじゃないですか。だけどこの時美容部員さんに仕上げにひいてもらって鏡を見た時に「あ、これ欲しい」と思う美しさ。白目がクリアに見えるんですよ。そして美容部員さんの

「なんだか幻想的ですよね」

Night time sky


というダメ押しのような殺し文句もあり、アイシャドウと一緒に購入。お尻の部分にシャープナーも内蔵されていて実用的でもあるこのアイライナー。リピート決定です。

関連記事:アジアン・ビューティー風メイクはもっと目元にパープルを取り入れてもよい(2) - Inside the gate

こうやってシリーズを読み返してみると、全部NARSなの。私の中でパープル=演歌歌手というイメージを払拭してくれたブランドであることは間違えありません。

日本人特有の「病気でも頑張る!」というパフォーマンスはアメリカ人の目に異様に映る

ベースに勤めていた頃の話です。


「あいつまた休みなんですよ。信じらんない。マリアさんがおととい会った時、彼女具合悪そうでした?」


日本人女性従業員真由美さん(仮名)が私にこう聞いてきました。
真由美さんは、他の従業員が病欠して自分がカバーしなくてはならなかったため、激怒していたのです。困った時はお互い様なのにね。

「どんなに苦しくても働く」そのパフォーマンスが客にとっては見苦しい

彼女は古参の従業員で、典型的なドメスティック思考の従業員でした。そしてどんなに具合が悪くても出勤して働いて「自分はこんなに苦しくても、頑張っているんだ」というところをちゃんと見せて、「だったら帰っていいよ」と言われてから帰るのが社会人のあるべき姿だと思っている人でした。
げほげほいいながらお客様に商品を渡す・・・。
「私、苦しいけど頑張ってます」というパフォーマンス。渡される側の気持ちは考えずただの自己満足です。

Day 59, Project 365 - 12.18.09

だけど当時の上司・ライアンは違いました。根性!みたいな精神論と、質の良い接客はまったく関係ないという、常に顧客目線のプロフェッショナルな人でした。っていうかそれが社会人のあるべき姿ですよね。どんなに苦しくても頑張ると言い張るのであれば、お客様に見苦しいところを見せるべきではないのです。

You can't be sick here.というのが彼の考えでしたから、接客にあたる従業員がぜいぜいゲホゴホ鼻をずるずるさせていたら、そこで食事をしたいと思う人はまずいないだろうというような人。「そういう従業員に接客される客の気持ちを考えろ」
ですから彼は具合の悪い従業員はさっさと帰宅させて、自分も率先して現場に立ってフォローしてくれる上司でした。
病欠の従業員をカバーすることに対し真由美さんがあまりにもぶーぶー文句を言い続けるので、私はライアンが巡回してくるのを待ちました。

プロフェッショナルな考え方、働き方ができない女性従業員への対応

真由美さんは直接ライアンに不平は言いませんでした。ぷりぷりしながら、嫌々仕事をこなすのです。物を置く時にわざと大きな音をたてたりして「私、怒ってるの。なんで怒っているのか聞いて!」と待っているような人でした。男性にとって一番面倒くさいタイプです。
そしてライアンは真由美さんに「どうしたんだ?」と声をかけました。そして真由美さんの気が済むまで話させたのです。
私達はロボットではありませんから、365日健康で完璧に仕事はできません。ダウンすることもあります(ただしあまりにも当日欠勤が多いと、当然ながら業務評価、HPTの場合は契約更新に響きます)。
そういう時にお互いを助け合うことも仕事の一部なのに、自分が助ける側に立たされた時に過剰反応する真由美さんに、ライアンは静かにこういいました。
「帰っていいよ。僕がここに立つから」
ライアンらしい最終通告だなぁと思いました。聞いた瞬間は親切のようにも聞こえるけど、「そんな態度の従業員をフロントラインに置くわけにはいかない」という完全に匙を投げた冷たい言い方。
相手が恥ずかしくなるような、申し訳ないと感じるようなひとことで片づけるのです。負けたふりをして実は常勝というライアンらしい。真由美さんもバカではありませんので、このひとことを聞いてさすがにまずいと思ったようで、文句を垂れ流すことをようやくやめました。
病欠の人間が一人いてもカバーできる人員がそろっているのに、上司が現場に立つということは、従業員の誰かしらがきちんと仕事をしていないことになります。自分がその張本人になることは、真由美さんもまずいと感じたのでしょう。
ここまで書いてみると、この「病気でも頑張る!」というのは日本人特有より真由美さん個人の問題だったのかもしれません。同じ施設で働いていた他の日本字従業員達はここまで鬱陶しいパフォーマンスをしていませんでしたから。

休めと言ってくれるボス。じゃあ誰のせいで休みにくいの?

とはいえ慢性的に人不足である横須賀基地のフロントラインで働く人達はcall in sick(体調不良のため休ませてほしいと電話連絡すること)しづらいでしょう。

Head cold!

では誰のせいで当日欠勤しにくいのかというと、シフト調整をしているスーパーバイザー(フロントラインで働く従業員にとっては直属の上司にあたります)が漏らす「仕事増やしやがってよー」という本音のせいです。
責任ある立場でいろいろ大変なのは理解できますが、本音が出そうになってもぐっとこらえて「お大事にね」のひとことがちゃんと言えて、代打を速やかに手配できる器の人がスーパーバイザーであるべきです。

 
関連記事:朝礼くらいさわやかにやらせてほしい 日本の大声信仰が辛い - Inside the gate

ベースで働き始めて右も左もわからない人へ

「遅刻しそう!」

「給与明細を見たけどどうも金額がおかしい」

「『妻とはうまくいっていなくて・・・』と今どき昼メロでも使われないようなセリフで既婚の男性同僚が誘ってきて困っている」

・・・といった場合、ベースで働き始めると、最初はそれぞれ誰に相談・連絡したらよいのかわからないんですよね。

HRO、アメリカ人、フィリピン人・・・いったい直属の上司は誰なの?どの窓口が何をやっているの?

米軍基地で働いているというだけでフェイスブックの職業欄のところにU.S. Navyと表示している人がいますが、それは違います。あなたは米軍所属ではありません。あくまでもLocal hire (現地採用の扱いです。

HPT/IHA/MLC(日本政府雇用)の場合

私が働いていた環境を例にしていますので、同じ横須賀基地でも若干違うところもあると思います。参考程度に読んでみてください。

HPT/IHA/MLCって何と思われた方は米軍基地の正職員は安定しているのか(常用と時給制の違い) - Inside the gateという記事をチェック

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(画像はLMOのサイトからお借りしました)

簡単に説明すると、在日米軍に奉仕し、日本政府からお給料をもらうという構図です。

  • 上司:現場(ベース)にいます(多くの場合アメリカ人。フィリピン人が上司という不運なケースもある)
  • HRO(人事部):ベースにあります。各施設に一つずつではありません。現場で深刻なトラブルがある場合など、ここの日本人スタッフが対応してくれます
  • LMO:労務は現場のAdmin.が管理し、オフベースにあるLMO(独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構上の画像の中央)で処理されます。Adminがフィリピン人だと従業員達は苦労しますが、それについてはまた他の記事で書きます

書きました:フィリピン人がAdmin.だとこうなります - フィリピン領 横須賀基地(サブブログに飛びますので、帰ってきてくださいね)


この関係が見えてくるまで時間がかかる人もいるでしょう。現場での人間関係のトラブルの相談のためにLMOに行くのはおかしいし、給与計算が間違えていたからと言ってアメリカ人の上司に申し出るのもおかしいのです。「俺知らね。Admin.に聞いて」と言われておしまいでしょう。


遅刻しそう!→これは所属先のトップではなく、直属の上司(スーパーバイザー)に連絡してください。

パワハラ等の相談→まずは直属の上司→所属先のトップ→それで駄目ならHRO(順序を間違えないようにしましょう!
給与がおかしい→Adminに話してみる。Adminのタイムカード集計時のミスなのか、それともLMOの給与課のミスなのかはそこでわかる。いずれにせよ、もしも計算ミスで本来支払われるべき金額よりも少なかった場合、不足分がすぐに振り込まれるということはありません。Adminのミスの場合自腹を切って補填していたAdminもいました。

以上、あなたが日本政府雇用の場合です。もしもあなたが日本人でも、配偶者が米軍の現役の将校・兵士の場合はアメリカ政府雇用となりますから、LMOは関係ないですね。

ベースでもパワハラはあります(4)理不尽なカウンセリング=追い出す準備 2/2

前回の記事では、私が勤務していた施設の事実上のナンバー2のポジションにいたフィリピン人・メグの指示により、スーパーバイザーが私に理不尽なカウンセリングシートを出そうとしたところまで書きました。

サイン拒否

Signature


「このことで私をカウンセリングすると決めたのは、あなたではありませんよね?(どうせメグなんでしょ)どう考えてもこんなことでカウンセリングをされて、それが私のレコードに残るのは理不尽だと思います。サインはしたくないからこれからオフィスに行って話をしたいので、その間私の仕事をカバーしてもらえますか?」


私がそうスーパーバイザーに告げてサインを拒否すると、彼女はもう自分がこの件に関わらずに済むとわかったせいか、ほっとしたようでした。そして私はそのカウンセリングシートを借りてオフィスに直行しました。ナンバー1と2(メグ)と、同時に話をするためです。
衝突した場合、守られるのは確実にメグですから無理ゲーにも思われましたが、日本人で英語もメグの10倍うまく話せる私には勝算がありました。

オフィスで直接対決

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オフィスのドアをノックして入っていくと、カウンセリングシートを手にもち憤っている私を見たメグの顔がみるみるうちに青ざめていきました。自分を恐れるあまり声を上げることはないだろうと思っていた大人しい日本人従業員が、これから自分に噛みつこうとしているのですから。
日本語も英語も拙いメグ。
ゆえに従業員とのコミュニケーションもきちんととれず管理しきれなかったメグ。
だけど幹部になれたメグ。
ここから先の直接対決では絶対に彼女は劣勢でした。

「XXXXXをし忘れたということでカウンセリングというのはあまりにも厳しすぎると思います。そもそもXXXXXは私の日常業務とまったく関係ないことですよね。
今後はこの程度のことでカウンセリングされるとなると、ほぼ毎日のようにカウンセリングを受けることになります。きっと明日は「コーヒーにクリーマーを2個使ったからカウンセリングしますよ」と言われるでしょう(薄笑)。
そしたら1か月もたたないうちに私のレコードには10回以上のカウンセリングの履歴が残ります。これでは今後ベースで異動する際に私にとってあまりにも不利益です。いったい何をすればカウンセリングの対象になるのか、ジョン(ナンバー1)もいる今この場で基準をはっきり教えていただけますか?また、今後カウンセリングを気にするあまり萎縮しながら仕事をする私に、よいパフォーマンスを期待されても困りますので、もし何かしでかしても尻ぬぐいはお願いしますね


するとジョンが鼻で笑ったのです。私に対してではなく、メグに。
そして私の手からカウンセリングシートをとってそれを読み「君はこんなことでマリアにカウンセリングシートを出したのか?」とメグに聞きました。
しどろもどろになるメグ。私はこれを待っていました。彼女の英語力では私を理詰めでいい負かすことなど絶対にできないのです。また彼女は日本語も日常会話がなんとかできる程度でした。

弱者の切り札 ”HRO(人事部)”

ジョンはこの件に関しては心配しなくてよい、と言ってくれました。カウンセリングの対象に対してもそれ以上話そうとせず、デスクに戻っていきました。ジョンはメグ側の人間でしたが、メグよりも賢かったのでしょう。「こちらに勝算はない」早々とそう踏んだのです。
ただこれで一件落着だとは思わなかった私は、怒りをこらえながら私と目を合わそうともしないメグにダメ押しをすることにしました。

「そのカウンセリングシート、いただけますか?」

メグもバカではありませんから、これでピンと来たのでしょう。
「HROにパワハラの証拠として持っていかれる」と。私はHROに行ってすべてぶちまけるつもりでいました。この件だけでなくそれ以前にされたことも。

「そのシートをもらって何をするの?」

「HROに行って相談します。このようなバカげたことでカウンセリングを仮に受けたとして、それが私のレコードに残った場合、異動に悪影響はあるのですか?と」

メグが大きくため息をつき観念したかのように「好きにしたら?」と言ってカウンセリングシートを私に返しました。
私がHROに行ったら日本語で日本人の従業員に相談するわけですから、細かいニュアンスまですべて伝わってしまうのです。複数人で相談に行かないと動いてくれないといわれているHROでも、このカウンセリングシートのインパクトは大きかったでしょう。ですから利用しない手はなかったのです。
ただ結局HROには行きませんでした。その代わりに一番お喋りなフィリピン人にわざと「誰にも言わないでね」と言ってこう話しました(フィリピーナにはよくこの手を使います)。

「(カウンセリングシートへのサインを拒否した経緯を話し)HROに行こうと思ったんだけど、今回はジョンが心配しなくていいよって言ってくれたから行かないことにした。でもね、このカウンセリングシートは切り札としてとっておくの。また何かされたら今度こそ行く」

このフィリピーナはもちろんメグに嬉々としてチクリました。私の狙い通りですね(爆)。それ以来メグは私の目を見なくなったし、極力話しかけてこなくなりました。そしてメグに制裁がくだされたのです。自分を何かと守ってくれていたジョンが去り、後任としてやってきたライアンの手によって。


ベースでもパワハラはあります(4)理不尽なカウンセリング=追い出す準備 1/2 - Inside the gateに戻って読む

ベースでもパワハラはあります(4)理不尽なカウンセリング=追い出す準備 1/2

 

カウンセリングという言葉を聞くと、悩みを聞いてもらったり相談に乗ってもらったりという様子をイメージするでしょう。

Clinic Counselling Session

ところがベースで働く人間にとって、カウンセリングといえばポジティブなイメージはありませんでした。なぜならそれは上司に呼ばれて指導を受けるという意味も含まれたからです。現場が全く見えていない理想主義の上司と衝突した際"Just let us do this now and you can give me a counseling later!!!!" 「(この状況ではあなたの指示には従えないから)今はひとまずこうやらせてくれ、お説教ならあとで聞くから!」と言い放った男性従業員のことを今でもよく覚えています。
もちろんカウンセリングなので自分にも発言の権利は与えられ、相談に乗ってもらう機会としても設けられていますが、「マリア、カウンセリングするよー」「はーい♪」といいたくなるようなものとは程遠く、むしろその正反対でした。
事務職に異動してからは一度も聞きませんでしたが、接客業に就いていた時はしょっちゅうこの言葉を聞きました。私自身も一度カウンセリングシートにサインをさせられそうになりました(結局サインせずに済んだ。それは後述)。ところがそのカウンセリングは指導ではなく、ただの嫌がらせだったのです。

カウンセリングをすると追い出しやすくなる理由

まずなぜカウンセリングの実績を作ることが追い出す準備なのでしょう?
それは仮に私を「問題のある従業員」として他の施設へ飛ばす及び解雇する場合、それなりに証拠が必要となります。「こんなことやあんなことをやっていた厄介な従業員です」という証明になるのが、カウンセリングの履歴。回数が多ければ多いほど、雇用者としてはスムーズに追い出せるのです。

逆にカウンセリングの履歴が何もないと「なんでそんなちゃんとした人を解雇・異動させるの?」という風になってプロセスが難しくなります。

カウンセリングの対象が急に厳しくなった

フロントラインで働く人間の一部に対し締め付けがきつくなり始めた時期がありました。「今後は厳しくカウンセリングしていくわ」と言い出したのはメグ(仮名)というフィリピン人。権力を与えてはいけない人間に与えるとこういう風になるんだなというよい例でした。

◆このブログを初めて訪問されている方は「なんで在日米軍基地で日本人がフィリピン人の下で働かなくちゃいけないの?」と不思議に思われたと思いますので、暇でしようがない時にでもこちらの記事をご覧ください>>横須賀基地の聖域がフィリピン人に侵略されるのも時間の問題 - Inside the gate


メグの口癖は「解雇されないように気をつけなさいよ」
ベースの従業員は正職員(IHA/MLC)であればちょっとやそっとのことじゃ解雇されませんが、メグは当時自分にとって邪魔な従業員を解雇に追い込める力を持っていました。ここらへんの詳細はいつか私が本を書くことになったら書きたいと思っています(うへへへへ)。本にはサインをして皮のカバーをかけてメグ本人に送り付けて、日本語が読めないこの糞ビッチのために私が自ら音読したオーディオブックも添えたいですね。
話が脱線しましたが、メグが急にこのように女帝のように振る舞い始めたのは危機感からでした。そもそも自分に自信のある人間はこんな風に下の人間を押さえつけようとは思わないものです。なぜ彼女が危機感を持ったのかは、個人の特定に確実につながるためここでは書かないことにします。

スーパーバイザーに呼び出された

当時の私のスーパーバイザーはアメリカ人女性でした。私は着替えてタイムカードを打刻し、チェンジファンドを取りにこうとすると「マリア、勤務を始める前にちょっと時間をもらえる?」と彼女に声をかけられました。ああ、嫌な予感・・・・。そのまま彼女と一緒にキャッシュケイジに行くと、こういわれました。



「あなたはこの間XXXXXし忘れたから、これからそのことについてカウンセリングします」




え・・・・・????




一瞬英語が聞き取れなかったのかと思うほど、信じられないようなことをスーパーバイザーに言われたのです。XXXXX=そんなことでカウンセリングするの?というようなことでした。どのくらいくだらないことだったかわかりやすく説明すると、給湯室のポットの入/切のつまみを切り替え忘れたとか、カップヌードルに日清がせっかくつけてくれているシールを使わなかったとかそのレベルですよ(苦笑)。
その瞬間「これはメグの指示によるものだ」とすぐにわかりました。どんなくだらないことでもいいから、アベマリアに1ストライク与えたい。そしてアウトのaxを振り下ろす時の手続きをスムーズにしたい、ただそれだけなのです。

「カウンセリングを受ける前に確認させてもらいたいのですが、私はたかがXXXXXをし忘れたことでカウンセリングをされるのですか?」


スーパーバイザーは言葉に詰まりました。彼女は軍人の配偶者でしたから、よほどのことがない限り解雇されません。よって女帝メグを恐れる必要もなかったのですが、何しろ彼女は遅刻が多く、その分メグが彼女の業務をカバーしていたため、弱みを握られている立場としては、その施設で事実上ナンバー2だったメグの言いなりだったのです。

サイン拒否

Signature

2/2に続く

 
関連記事

ルワンダ虐殺を生き延びた人々の現在

フェイスブックにHumans of New Yorkというページがあり、ニューヨークのみならず世界各地に飛んで行き、現地で出会った人々から聞いたストーリーを紹介しています。この記事を書いている現在はルワンダからのストーリーを紹介しています。


1994年のルワンダ虐殺の生き証人達が語るストーリーは、1回では伝えきることができないため、このように何回かに分けて語られているのですが、彼らがなんとか今は幸せに暮らしている様子がわかります。この様子を読んでいると、家族を殺され、自分は生き延びヨーロッパに亡命した、ルワンダに帰りたくても帰れない人々のことを思い出しました。

insidethegate.hatenablog.com

もう虐殺は終わったのに、まだフツ族に狙われているのではないか、と怯えなければならない人達。そして一時帰国して目の当たりにしたルワンダの変化に対する憤り。「皆虐殺の悲劇を忘れてしまっている。それでよいのか?」
「ルワンダが復興・発展していくには許すことしか道が残されていない」と現大統領は言います。
悲劇を忘れさり、前を向いて生きているように見える人達も実は深い悲しみをまだ心の中に抱えているのではないか、とHumans of New Yorkのルワンダ・シリーズでストーリーを読んでいて思いました。
マチェーテや銃を持ったフツ族の集団が自分の名前を叫びながら近づいてくる恐怖。友達や親せきに匿ってもらうも、数日、あるいは1,2週間が限界。そしてその人の家の裏にあるやぶに身をひそめる。そしてそのやぶは棘が多ければ多いほどよい。なぜなら連中が避ける場所だから。トイレは隠れ場所として思いつきやすいところだけどそれと同時に最も危険。なぜなら連中が死体を捨てに来る場所だから。
息をひそめて隠れていたら連中が長身の男性を取り囲んで連れてきた。それは自分の父親だった。これから目の前で起こるであろうことが何なのかくらいわかっている。だから目をつぶり耳をふさぎ、目を再び開けたらそこに立っているのが自分の父親でないことを祈るけど、何度見ても自分の父親で、愛する父親が殺される瞬間に叫び声すらあげることができない。
そういうものを見てきたルワンダの人々の目はどんな目をしているのだろうと思います。
またフェイスブックでストーリーを読んでいると、人々を救うべき立場にあるキリスト教会の司教達が真っ先に逃げてしまい、その裏切りに対し、または神そのものに対して絶望する人々の気持ちが書かれていました。ああ、ここはレヴェリアン・ルラングァ氏の手記にも書かれていた、と思い出しました。


だけど逃げずに最後まで信者達を見捨てなかった聖職者もいます。それが今回HONYのシリーズで紹介されていました。



この方は牧師さんです。
他には同じシリーズの他のストーリーのコメント欄でシェアされていたCelestin Hakizimana司教。
フランス語あるいはドイツ語が分かる方は以下を動画をご覧になってみるのもよいでしょう。


関連記事:憎しみと悲しみを抱えて生きる人達 - Inside the gate