Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

説教師やモチベーショナルスピーカー達は、「麻薬よりはまあいいんじゃないか」っていう存在だと思う


アメリカには説教師(たいていの場合本職は牧師)、モチベーショナル・スピーカーという職についている人達がいます。

説教師(牧師=pastor)は聖職ですが、そういう仕事に就こうという人って本当にすごいなぁと思います。常に人のお手本となるように生きるのって息苦しくないのかな。彼らは自分達の所属する(あるいは運営する)教会の教えをスピーチを通じてわかりやすく伝えます。

対してモチベーショナル・スピーカーは、彼らの思考回路の基幹となる部分になんらかの信仰はあるのでしょうけれど、特定の教会に所属しているわけではなさそうです。
説教師もモチベーショナル・スピーカーも、道標になってくれたり、活力を与えてくれる存在です。

モチベーショナルスピーカーについては以下の記事をご覧ください


黒人にも支持される白人説教師


Power of Thoughts - Pastor Paula White - YouTube

 説教師お一人目はPaula Whiteさん。BET(Black Entertainment Television=黒人向けの番組を放送する局)で最も人気のある説教師。異人種に支持されているんですよ。
彼女はもともと元夫と設立したWithout Walls Central Churchの牧師さんでしたが、離婚後はそこを離れて現在は自分自身の名前を冠にした団体を率いているようです。

何も聞かずに「説教師はたいしたことを話さない」とは決めつけたくないし、書きたくないので、彼女のスピーチを一通り聞いてみました。ゲップでそうです。
Paulaさんが説いている内容は、キリスト教の教えをベースにしている部分が思ったよりも少なく(私がわかっていないだけかも)、むしろこの人は自分が乗り越えてきたものを支えや題材にして、観衆に向けて説いているように見えます。

http://www.flickr.com/photos/66656285@N00/8335754770

photo by floato


何を乗り越えてきたかというと、まずは両親が離婚して、母親が幼いPaulaさんをミシシッピ州トゥペロからテネシー州のメンフィスに連れていってしまいます。そして父親は「Paulaさんを自分の元に返せ。さもなくば自殺する」と脅したのですが、母親はこれを聞き入れませんでした。その結果父親は自ら命を絶ってしまいます。
その後Paulaさんの家族の人生は転落していきますが、Paulaさんが9歳の時に母親が再婚します。ところがwikipediaによるとPaulaさんは6歳から13歳まで性的なものも含む虐待を受け続けたと書かれていますので(加害者も状況も複数にわたる)、母親の再婚で生活の基盤ができた後も、決して幸せな人生ではなかったようです。そしてこうやって書いてみると、南部のwhite trashそのものだなぁという言葉しか思いつきません。

このように厳しい試練続きの半生を歩んできた人の言葉には説得力がある、というのは、「【洋書】この人が推薦する本は必ず売れる - Inside the gate」でご紹介したオプラ・フィンフリーさんにも言えることですね。


続いて説教師二人目はJoel Osteenさん

メガ・チャーチ。宗教というよりはビジネス?主催者は稼ぎまくっています


動画を見ていただくとわかると思いますが、彼が主宰している教会のアリーナはお見事。これを買い取ったということは・・・相当儲けていますな、オスティーンさん。私の知っているアメリカ人のギャンブル中毒患者が彼の著書を愛読しています。
あなたはできる 運命が変わる7つのステップ

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 この方が主宰している教会はテキサス州ヒューストンにあるLakewood Churchというメガ・チャーチの一つです。メガ・チャーチといえば、宗教というよりはビジネス、あるいは娯楽みたいなものになりつつあるという批判もあります。実際にOsteen氏もキリスト教徒のはしくれでありながら、あまりにも物欲的な教えを説いていることで批判されています。「僕が金を稼ぐのにキリスト教の暖簾が必要なのさ」ということですからね。
Paulaさんが美容整形手術を受けているというニュースが出回った時も「信者から集まった金でそんなことをするなんて!」という批判の声が上がりましたが、信者を救い、導いていることの対価と考えると搾取にはならないのでしょう。

神は全能。とりあえず祈っとけ

話をオスティーン氏に戻しますと、彼の説教は「神様を信じるということとはこういうこと」と子供や、あるいは信仰心が薄くて宗教に関心のない私にすら伝わりやすく、わかりやすく話すスタイル。スピーチの一部を以下に引用しました。


「神はあなたがいるべき場所を知っています。あなたは心配したり、いらいらしたりして生きなくてもよいのです。あなたが神を信じれば、神はあなたのもとに然るべき人々を連れてきてくれます。彼は明けるべき扉を開けてくれます。問題を解決してくれます。

(中略)

 

 『私はいつになったら運命の人に会えるの?』

『なんでこんなに待たされなくてはいけないの?』


あなたはタイムテーブルをコントロールすることはできません。種蒔きはできます。水やりもできます。だけど日光を与えられるのは神様だけです」

うーん・・・・・・。
やっぱり神様は絶対なのです。だけどうまくいったことはすべて「神様のおかげ」、うまくいかないのは「神に祈りが届いていないから」と何でも神様次第になるのってどうなのだろうと、オスティーン氏の熱いスピーチを聞いた後でも疑問に思ってしまうのです。祈る前にやることをやる。やるべきことをやってから祈る。私はそう思うのです。やるべきことをやらずに「祈れば救われる」と思うのはものすごい他力本願です。
だって前出のギャンブラーだって、この人に傾倒する前に、まずはギャンブルやめて生活立て直そうぜって思わないのでしょうか。それともギャンブルをやめられないからこの人にすがるのでしょうか。まあ酒や薬にはまるよりもずっといいか。

あなたの周りには、説教師やモチベーショナルスピーカーよりももっと大切なことを言ってくれる友人や家族がいる。

私はこういう人達のスピーチをお金を払って聞きに行って「素晴らしかったわ!」と思うこと自体はおかしいと思わないのですが、喋ること、伝道することを本職としているプロの話を聞きに行く前に、周りにいる人に感謝してみることをおろそかにして、プロのスピーチを聞きに行って「わぁー!なんかいい人になれた気分!」っていうのはもったいないと思うのです。
自分に必要な言葉は、耳にやさしい甘い言葉、きれいな言葉とは限りません。あなたをよく知っている人が言ってくれる耳が痛い言葉の方が、本当に必要な言葉なのです。だけどそういうものには耳を貸さなかったり、あるいは反発して、こういうモチベーショナルスピーカーや説教師の言葉にばかり心酔するのはおかしいです。


外部関連記事
There's no such thing as a motivational speaker
要約すると、何の実績もない人間が「俺/私の話を聞きたいだろ?」と勘違いして目指すのがモチベーショナルスピーカーではなく、「この人の話が聞きたい」と周囲に担ぎ出されるほどの実績がある人が「話すこと」でお金を稼ぐべき、ということです。
「アベマリアです。モチベーショナルスピーカーです。2時間のスピーチでチケットは8000円でーす」と私が言っても「アベマリアって誰?2時間に8000円出す価値あんの?」と言われておしまい。
だけど本業で実績があって世間に広く認知されている人なら、モチベーショナルスピーカーを名乗る必要はなく、講演会でささっと人を集められます。


関連記事:それは人間性ではなく、職業です。モチベーショナルスピーカーという仕事 - Inside the gate