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Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

枯れない美女(2)

枯れない美女(1) - Inside the gate から読む


「今回のハワイでの手術は、経費の関係で君は同行できないんだ。寂しいけど、一人でなんとか頑張ってくるよ」

そういってアンバーの夫はハワイに発ちました。
術後の経過が気になってアンバーが病院に電話するも、その病院につながりませんでした。夫の携帯電話は病院内では電源を切ってありますから、連絡のとりようがなく、アンバーは心配しつつ、久しぶりに一人でゆっくりと今後のことを考える時間が得られたことにほっとしていました。

http://www.flickr.com/photos/42544714@N04/24026870011

photo by Derek Giovanni Photography


だけど病院に電話がつながらないというのはどう考えてもあやしいのです。そこで夫が帰国し、ハワイの海軍病院で処方された薬の作用で朦朧としているところを狙って"Unlock your phone."と言うと、夫はあっさりとunlockして、深い眠りに落ちました。

男の携帯電話を見てもいいことなんて一つもないとよく言うけど、見てよかったんじゃないかな

夫の携帯にはハワイ在住の女性とのやりとりが残されていたそうです。
そして本来ならば妻であるアンバーも同行できたはずなのに、夫はあえて単身で手術のためにハワイにいくよう手配したことも発覚しました。その女に会うためです。病院に電話してもつながらなかったのは、夫が嘘の番号を教えたため・・・。
そしてその女からは「次の駐屯地はハワイを希望してくれるんでしょ。そしたらこれからはもっと会えるようになるね」というようななことが書かれていました。
これを読んでアンバーは二人の関係の修復を完全にあきらめることができたのです。何か決定打が必要だったのでしょうね。夫の携帯をチェックせずに、何も知らずに夫とやり直そうと努力をしている間にも年をとっていくのです。そう考えると、携帯をチェックしてよかったんじゃないかな。

後は前を向くだけ

夫が離婚に応じないため、離婚成立まで色々大変そうでした。アンバー級の女性を見つけるのはなかなか大変ですから、手放したくない気持ちもわかりますが、自業自得です。美しいだけではなく、精神的・経済的・社会的に自立していたアンバーは、前を向いて一人で歩き出そうと決めたらその後はもう振り返ることはありませんでした。
アンバーの"I'm not getting any younger. I wanna do something to make myself happy."のひとことで、夫は彼女がいかに自分との結婚生活において不幸なのかをつきつけられ、もう見てみぬふりはできなくなり、説得するのをあきらめました。
ふっきれた後の彼女の美貌は迫力を増しました。最初の一歩を踏み出すことを恐れていたアンバーですが、すぐにlegal separation(法的に認められた別居生活)に入りこう話していました。
「今までは一人になるのが怖かった。でも一人になってみてわかったことは、夫について横須賀基地で暮らしていた頃から、既に寂しかったっていうこと。二人でいても寂しかったの」

関係の修復を強く望む夫に連れられて、休日にロマンチックなデートスポットに出かけるも、表面だけ取り繕うことに疲れて、虚しさを感じて終わるだけ。二人の不仲を噂で聞きつけた米兵達が、アンバーの心の傷を癒すふりをして大喜びで近づいてきて、彼女の「はいて捨てるほどモテる」状態が始まりました。
彼女は苦しい時でも毅然としていて、美しかった。職場で時々隠れて泣いていることもありましたが、数日間落ち込んで泣きはらして、そして再び顔をあげて歩き出すのです。
「もうどうにもならない夫婦生活の中でぐだぐだ言っているよりは、お洒落して外を歩いて男にちやほやされていた方がいいわ。ジョージ・ワシントン()の連中なんて、私が指を鳴らすだけで意のままに操れるんだから」

美しさが女性にとってどれほど大きな力をもたらすのか、そして自分の美しさの価値をよくわかっていたアンバーらしいです。
かつてアンバー夫妻がアメリカで暮らしていた頃、夫の浮気相手だった女(ハワイの女とは別の女)は、「妻とは離婚する」と嘘をつかれていたことに対する怒りを相手に向けて、相手の不幸を望み、彼の上司に全てをぶちまけました。
だけどアンバーは自分が幸せになるためにはどうすべきなのか、ということに集中しました。ハワイの女の存在を知った後も、その女のことはどうでもよく、離婚成立まではこれからの自分の人生だけを考えて日々を過ごしていました。
その女が自分よりも美しいかどうか、自分と比べて学歴は・・・若いのか・・・など、まったく興味がないのです。

"Have you dropped a bomb on your husband yet?"

「もう旦那に爆弾投下した?」(=「なんでハワイに一人で行ったのか実は知っている」と旦那に言って凍りつかせた?」)

"No. I'm saving it for later."

「ううん。後のためにとっておいてある」


といった感じで、もうあっけらかんとしていました。彼女の心の傷の深さは私には想像もつかないものでしたし、彼女が飄々としていればしているほど、そこに辿り着くまでにどれほど彼女がもがいたのだろうと考えさせられるのです。
一人になりたくないからという理由だけで、あのまま婚姻関係を続けていたら、きっと彼女は枯れていたでしょう。<続く

※ジョージ・ワシントン:アンバーがまだ日本にいた頃、横須賀を母港としていた米空母。現在はレーガンに交代されています。


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