Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

日系企業という組織の中をすいすい泳いでいくために役立つのは、ちょっと悲しいヒューマンスキル

 

私はベースで働いていて、インターナショナルな環境の特有の困難な場面にも遭遇しましたが、日系企業で働いていた時の100倍いいやと思えました。

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それでは日系企業で働いていた時のどんな面が100倍嫌だったかといいますと、合理的に動くと、常識知らずとか協調性がないと決めつけられるからです。

私がある新人研修を担当しました。その研修グループは同期となる新人が8人いたわけですが、相当厳しい研修ですから、途中で脱落者が出ることは予想していました。
そして予想通りもうすぐ新人研修が終わるよというところで、岡村さんという新人女性が辞めることにしましたといったのです。
彼女がその話をしだしたのは、その日の研修項目をすべて終えて、私が研修室を片付けていた時でした。それを聞きつけた、隣の研修室にいた女性社員数人がやってきて、そのうちの一人、古谷さんが岡村さんを引き止めました。

「どんなことでもとりあえず三年頑張ってみようって思わない?ここまで頑張ったんだから、もったいないと思わない?」

そう女性社員の一人が言いました。
他の研修生達は帰りにくいのでしょうか、研修は終わっているのに、デスクについて女性社員の話を聞いていました。帰ってもいいのに。この日の研修はおしまい。もうお給料発生していない時間帯ですよ。

私の心の声:「岡村さん以外は別に帰ってもいいのに。大勢残っても意味ないよ」

こういう私のような考え方をしていると、日系企業ではうまくやっていけません。


岡村さんは答えました。

「絶対にこの仕事は向いていないと思うし、長く続けられると思わないので・・・。このまま最後まで研修を受けても、会社にとって経費の無駄です」

「経費の無駄っていうのは言い訳だよね」

そういって引き留めた側である古谷さんは話を続けました。
こんなことで辞めていたらどこに行っても一緒だとか、皆で頑張ろうとか。

私は少し岡村さんの気持ちが理解できました。ここで研修を乗り越えて、岡村さんが独り立ちしたとします。で、やっと使い物になったなと思った頃に「やっぱり辞めます」って言われるよりは、確かに研修の最中で辞められた方がお互いよいのです。
そして皆で頑張ろうっていうけれど、おかしな連帯感に縛られてしまうよりは、今目の前にあるものが自分が進むべきではない道だとわかったら、すぐに引き返してもいいじゃないですか。「とりあえず歩き出してみよう」と思うだけのものがなかったということですから。

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photo by JusDaFax


古谷さんの話が単なる留意からお説教に発展し、口調が熱を帯びてきました。

「ギャラリーは数人いるから、私はここにいて一緒にお説教を聞いていなくてもいいよな・・・・」

そう思った私は、自分の使ったスペースを片付けて、さっさと研修室を出ました。そして翌日の研修項目で使う資料の確認と整理をし、帰ろうとしました。
その時です。研修室から演説を聴き終えた女性社員達が呆れたように笑いながら出てきてこういいました。

「アベさんって信じられない!」

何が信じられないのでしょうか。

「普通さ、ああいう時に同僚が真剣に話していたら、あの場にいて自分も最後まで聞くのが礼儀でしょう?」

(私)「でも私の他にも何人もいたから、一人くらいいてもいなくても一緒かなと思って、明日の準備してたの」

女性社員達が全員引いているのがわかりました。
そうなのです日系企業に勤めるOLとしてとるべき模範的な行動は、ちゃんと研修室に残って、そして時々「うんうん」と頷いたりして、聞いているふりをすることなのです。
こういう「あほらしいなぁ」っていうのが、ため息とともについ声に出てしまいそうなのをぐっとこらえて、周囲の人達と足並みを揃えて仕事をすることも、日系企業に雇われている人間ならば必要なヒューマンスキルなのです・・・・。

ベースで働くとこういう煩わしさはないのかって?
ありませんよ♪ 就業場所にもよると思いますが、私が勤務していた場所は、日本人もあっさりとしていました。有給だってしっかりとれましたしね。

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