Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

The moment everything just clicked.

お待たせいたしました。 

いい男はやはり危険だった。「尊敬できる上司」で終わるわけがない - Inside the gate
 という記事の続きです。

仕事の依頼を口実に私の携帯電話の番号を手に入れようとしたライアンですが、私があまりにも鈍感だったため、計画は失敗に終わりました。
だけど私が鈍かったからこそ、彼は惹かれたのだと後に言いました。ある日を境に彼の自分に対する関心に気づいてしまった後、私が彼の視線などまったく気にしていなかった頃の私の表情を、ライアンはもう二度と見ることができなくなったわけです。

例えば女の子の七五三の記念写真のことを思い浮かべてみてください。三歳の頃、見知らぬカメラマンの前に立たされて泣き叫んだり、強張った表情で写っていた女の子は、自分を可愛く見せる方法を知りませんし、興味もありません。だからこそ可愛くて魅力的だった。
だけどその子が七歳になると、カメラマンに対して媚びたような表情をし、自分を少しでも可愛く見せようとします。三歳の頃のあのあどけなさはもう二度と見ることができないのです。
何かを学ぶ、知るということは、人を成長させますが、確実にその人から何かを奪うのです。

「見つめることができる幸せ」そしてその幸せが終わって、「目をあわせられない幸せ」が始まった

私達スタッフの間にライアンとジェーンからある指示が周知されました。

「この客が来たら、自分の判断で対応・処理しないように。マネジメントから直接説明したいこともあるので、必ずオフィスに連絡を入れて私達を立ちあわせるようにすること」

そして私が窓口に座っていたある夕方、その客はやってきました。オフィスに電話をすると、ライアンがすぐに下りてきました。そして3人入れば人口過密状態になるほど小さかったその窓口に入ってきて、私の隣に座って指示を出しました。私は操り人形のように処理をし、細かい説明はライアンがしました。
客に書類を書いてもらっている間、窓口という小さな密室の中に沈黙が流れました。客がペンで記入する音がかつかつと聞こえてくるほど静かで、少し居心地が悪くなった私は、「そういえば最近しばらく見かけなかったけど、休暇だったの?」とライアンに聞きました。
そしてそう聞く時に、客の手元だけに向けていた視線を、隣に座っていたライアンに移した瞬間、ライアンがまずい、という感じで視線を逸らしたのです。
私が彼の方を向くまで、ずっとこちらを見ていたのは鈍感な私にもわかりました。そしてこの瞬間、何かが終わったのです。

客が書類に記入し終えたのを確認すると、後ろになにやら他に用事のある客が並んでいました。その客の対応をしている間、ライアンはもうそこにいる必要はないのに、窓口を去りませんでした。
そして私が接客をしている間、横からずっと見ているのです。私は視界の端で彼の視線を感じて、顔から火が出そうになりました。
その客の対応を私が終えると、赤くなったライアンは「もう行かなきゃ」と言って窓口から出て行きました。そこに残った私は、歩き去って行く彼の後姿を見ていました。そしてライアンは突然ぶるぶるっと頭を振ると、角を曲がって、見えなくなってしまいました。その後窓口に取り残されて座ったままぼんやりと考えていると、今までのライアンの何気ない行動の多くが意味を持ち始めました。

http://www.flickr.com/photos/61423903@N06/7172836245

photo by FutUndBeidl



The moment everything just clicked.
「そういうことだったのか」


と思いながら、今までの彼の行動を振り返り、なんて自分は鈍かったんだろうと思わずにはいられませんでした。
ライアンはいわゆるhands-on bossでしたから、オフィスに座ってYouTubeを見て笑いながら時間を潰すような上司ではなく、現場に下りてきて従業員とコミュニケーションをとりながら施設を運営するタイプでした。要するに、誰に対してもフレンドリーで「いい人」「面白い人」だったのです。
ですからもし私が何かされても、それは自分に対してのみではなく、皆にやっているんだろうな、としか思っていませんでした。だけどそういう小さなことの一つ一つが、彼なりのシグナルだったのだとしたら、まったく受け止めずに来たことに妙に申し訳なく感じてしまったのです。
そしてライアンは、もうその「鈍いマリア」と会うことはないのです。

はっきりさせておきたいこと。"This is just a crush."

翌日以降、ライアンと目が合うことはほとんどありませんでした。あったとしても、どちらからともなく逸らしてしまうのです。
フィリピン人女性従業員達はその様子の変化に気がついて、からかい始めました。

「マリアが私達と一緒にいると、ライアンはいつものように私達と雑談をせずに、挨拶だけしてさっさと通り過ぎていっちゃう。きっとマリアにアレルギーがあるんだよ(笑)」

そういう風にからかわれているうちはまだ安心でしょう。変に噂になったらお互いに困ります。
互いの間に流れる空気の変化に気がついたライアンは、私に変に勘違いされては困ると思ったのでしょう。それから数日後、私が窓口にいる時に「ちょっといいかな?」と言って入ってきました。

"I'm sorry if I've been making your feel uncomfortable, but I need to make myself clear. I love my wife and this is just a crush. It will go away. "

「もしも君に居心地の悪い思いをさせていたらすまない、だけどはっきりさせておく必要があるんだ。僕は妻を愛していて、これは単なる一時的なときめきなんだ。消え去るものなんだよ」

私は何も答えられませんでした。ライアンみたいな男性が自分をcrushと言っていることが信じられなかったからです。
黙って彼を見ていると、きちんとお互いを見つめるのは久しぶりだなぁと思いました。私が黙っているのは、crushの意味を理解していないからだと思ったのでしょう。フォローをしてきました。

"Are we ok? We're not gonna be weird, right?"
「僕達大丈夫だよね?なんか気まずくなったりしないいよね?」

"No. I was just shocked to learn that you have a crush on me. Someone like you."

「気まずくなるようなことはないわ。私はあなたが私に対して一時的に熱を上げているということを知ってショックを受けただけ。あなたのような人が」

"Is that a compliment?"

「それは褒め言葉?」

"Of course. You're way out of my league."
「もちろんよ。あなたは私とはまったくつりあわないもの」

そう伝えると、ライアンはにやっとしました。

"Can I tell you something more shocking?"

「もっと衝撃的なことを言ってもいいかな?」

この瞬間「この男はプレイヤーだ」、と思いました。
危ない。だけどよく考えてみたら、こんなにセクシーな男性が、ただのいい人なわけがないのです。

<続く>


シリーズ1「いい男はいい女のもの」それは日本もアメリカも同じ - Inside the gate

シリーズ2いい男はやはり危険だった。「尊敬できる上司」で終わるわけがない - Inside the gate

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