Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

米軍に救済される若者達の姿

ニコラス・スパークス著・Dear Johnという小説にこんな一節があります。

Growing up, I'd never considered entering the military.
Despite the fact that eastern North Carolina is one of the most military dense areas of the country - there are seven bases within a few hours' driving from Wilmington.

全米でも最も軍事基地が密集しているエリアの一つであるノース・キャロライナ東部。夢も希望もなくて、貧しい生活に嫌気がさしてとりあえず米軍に入った若者がうようよしていたり、住民の多くが、何かしらの形で米軍に関わっている仕事についている地域を想像してみてください。
女の子達が軍の福利厚生目当てで米兵に近づくような人間に育っても無理はありませんし、そのエリアではあたりまえのことが、外部からやってきた民間人には少し異様に見えるでしょう。

入隊すれば食べるものと住む場所には困らない

小説の主人公であるJohnは、多くの下士官のように高校を卒業してすぐに志願してブートキャンプに参加したのではなく、高卒で仕事を転々とし(どれも解雇という形で終わる)、自分と同じように最低賃金ぎりぎりのような仕事をして、毎晩のように場末のバーで酔っ払っている男達を見て、そこを抜け出す手段として選んだのが米軍への入隊でした。

お金がなくて選択肢が限られていた若者が、より多くの選択肢を軍で見つけることができる

Johnが生まれてすぐ、母親は彼と夫を捨てて出ていきました。それ以来あまり愛情表現がうまくない父親に男手一つで育てられたJohnの育った環境は、典型的な貧困層といえたでしょう。
だけどお金がないという惨めさは米軍志願の直接的な理由にはなりませんでした。それよりも、そういった環境で育った者同士で、このまま年をとっていくことへの恐れがJohnに入隊を決意させたのです。
勤勉なJohnはその働きぶりが認められ、上司にOCS(Officer Candidate School)へ入ることをすすめられるほどになります。どんな仕事をしても長続きしなかった彼が、こうして経験を積んで貯蓄も始め、より多くの選択肢を手に入れて、場末のバーで飲んだくれていた日々が過去のものになっていくのです。

税金を活かすも殺すも、結局は本人次第

親が与えてやれなかった選択肢を、こういう風に国が与えてやってもよいじゃないですか。貧困に対して、子供に責任はないのですから。
こうして税金で支えられる生活の中で、若者達がJohnのように自分の人生を作り上げていくかというと、そうではありません。あらゆるチャンスを酒で棒に振る兵士もいますし、他にやれることがないから、しようがなく軍にいる兵士達だって、もはや好きなだけ軍に留まれるわけではありません。
ちなみに横須賀を歩いている若い米兵を見て「教養がなさそうだよね」とか「DQNだよね」と感じたことがあるあなた。信じがたいかもしれませんが、海外に出される米兵は、まだまともな方なんですよ!>>なぜ米兵による事件は沖縄に集中すると思うか、横須賀基地所属の米兵達に聞いてみた - Inside the gate

 

Dear John (American Collection at Fwc) (英語) マスマーケット – 2009/12/1

◆日本語版「親愛なる君へ

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