Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

ランクも高くて人柄も素晴らしい人は、こんな感じでした


米軍のオフィサーの中には、自分よりランクの低いものには高圧的に出て、偉い人達にはへぇこらするas*holeも存在します。それは日本の自衛隊にもいるでしょう。
サル山の中腹で山頂を見上げている人達の中に少なからずそういう人間がいるのは、やはりいつの時代も、どの国でも変わらないのです。だけどベースに勤務していた時、ランクも高くて、人間的にも素晴らしい方に出会ったことがあります。

http://www.flickr.com/photos/35703177@N00/4709013556

photo by The U.S. Army

私が両替所に入っていた日のことでした。
中年のアメリカ人の男女二人組(明らかに夫婦ではないというのが、雰囲気でわかる感じの二人)がウィンドウにやってきました。
見た感じも至って普通のカジュアルな装いでしたが、女性が私に声をかけてきた時、今まで接客してきたアメリカ人とは明らかに違うものを感じました。
まず話し方が簡潔で、しかもたかだか両替所に座っている日本人従業員に対して、とても丁寧だったのです。

「こちらでお伺いしてよいのかわからないのですが、○月○日x曜日、xx時から20名でに△△を使用させていただきたいのです。どなたにお話をしたらよろしいでしょうか?」

女性がこう言ったため、私は担当部署にお連れすることにしました。
その際に、女性と一緒にいた、ペールブルーの瞳をしたグリズリーみたいな男が「担当者じゃない!マネジャーと話をさせろ!」と強い口調で言いながらにじりよってきました。
まるでその男は「この紋所が目に入らぬか!このお方は・・・恐れ多くも米海軍○○のXXであらせられるぞ!控えおろう!!!」とでもいいたげでしたが、お二人とも私服ですから紋所がついてないんですよ。その人達が誰なのか、私にわかるわけがありません。見る人が見たら、すぐわかるんでしょうけれど・・・・(わかりそうなやつらとは、こういうやつら→オフィサー以下とは口きかない」っていう人間もいます - Inside the gate)。


すると女性が男性を制止するようにちらっと見ながら「いえ、担当者の方のところに連れて行ってもらって構いません」と言いました。
その時の物腰の柔らかさというか、腰の低さを見て「この人はいったいどこの部隊の人なのだろう」と思いました。そして数日後、テーブル会計の時にその方のランクを知ることになるのです。

http://www.flickr.com/photos/51507689@N07/6146215151

photo by thehopeproject

△△で会議があり、その後は先日両替所の窓口にいらした二人組を含めた20名で、予約をしていた場所で会食をしました。その時私はたまたまカウンターに立って支払いを担当していました。
たいてい支払いは皆さんこのカウンターでするのですが、テーブルで会計をするお客様もいました。
ベースで食事をしてテーブル会計、しかもクレジットカードで支払う場合、クレジットカードを出したお客様のピクチャーIDによる本人確認を、サーバーがテーブルで済ませていることを前提に、キャッシャーは処理をします。
ただ実際は本人確認は省略されているケースが多いようでした。サーバーもやはり少しでも多くチップが欲しいので、本人確認はためらってしまうという気持ちは理解できます。本人確認は大切であり、サーバー/キャッシャーの仕事の一部です。だけど確認される側にしてみれば「僕が/私が他人のカードを不正使用しているというのか?」と感じる人も多いでしょう。
特にランクの高い人がカウンターで支払う場合、私は「この人ランク高そうだな」と思っても、構わずに誰にでも同じようにID提示をお願いして本人確認をしていたので、時々「俺が誰だか知らないの?」という、明らかに不快な表情をされたことはあります(知らないわよ)。
基地という狭い世界の中で、自分の権力がどれほど大きいものなのかわかっているからこそ、そういう顔をするのでしょうけれどね。

ですが、この団体の支払いはsplit checks(別々の会計)ではなく、altogether(すべてまとめて)でした。サーバーがチェックとクレジットカード、そして支払う方のIDを持ってきたのです。

通常、客→サーバー→キャッシャーに渡すのはチェックとクレジットカードのみ。IDチェックはテーブルでさっと済ませてすぐにポケットにしまうことが多いのですが、支払を申し出たこのお客様は、何も言わずにカードと一緒にIDをホルダーにはさんでくれたというわけです。
「自らIDを出してくれるお客さんは珍しいな」と思って、私はそのIDを見ました。するとそのIDは例の腰の低い女性客で、ランクはキャプテン(O6)でした。

米海軍のランク一覧:US Navy Military Ranks, lowest to highest

要するにこの女性客は、テーブル会計の際にIDの提示をサーバーからは頼みづらいだろうから、自らすすんで出してくれたのです。

彼女くらいのランクの人達であれば先ほども言ったように「僕が/私が誰だかわかってるだろう?」と思ってもしようがない人達ばかりです。だからIDを出すなんて、ばかばかしくて自分からすすんでやってくれるわけはないのです。
だけどこのお客様は違いました。あのグリズリーみたいな男なら絶対出さなかったことでしょう。

ちなみにチップは・・・・なんと飲食代金の20%以上置いていきました・・・・。大きな団体だったから、という気遣いがあったとしても、20%はすごい。横須賀基地ではチップの相場は飲食代金の10~15%ですよ・・・(本記事公開当時)。

【余談】ランクを振りかざす人達の根底にあるものを英語でsense of entitlementといいます。意味は英辞郎でチェック。 (転載禁止のためリンクを貼っています)

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