Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

英会話講師 大人を教えることに比べて、子供を教えることのどこが大変なのか

私が子供英会話講師としてクラスを担当できるようになる前に、研修に参加しました。入社前の研修が二段階に分かれているのです。
第一段階の研修を終えると、第二段階として本社研修に送り込まれるのですが、まずこれがきつい。だけどこのきつさに耐えられないということは、一日何クラスも持たされる現場など絶対に乗り切れないということですから、本社研修を乗り越えることをまず第一目標に考えていました。だけど研修施設の中で同時進行していた、大人の生徒を教える予定の新人達の研修との差を目の当たりにして「大人を教えるのって楽そうでいいなぁ」と思い、果たして自分が選んだ道は正しかったのだろうか・・・と迷うことになります。
大人を教えることならではの大変さもあるのでしょうから、比較するのは無意味でしょう。だけどやはりその差は歴然としていました。

就寝時間の違いは新人研修の時から顕著

まず研修で(すら)就寝時間が大人専門側と子供専門側ではまったく違いました。持ち帰り残業量が大きく違うからです。
子供を教える予定の新人達は、レッスンプランを練りなおすこと、教材作りなどに時間がとられますので、その日の日程を終えて食事・入浴を済ませた後に、研修施設の自室(たいてい相部屋)でそれらを行います。もう研修の時点でサービス残業が発生しているということです。
ところが大人を教える予定の新人講師達にはそういう必要がありませんから(レッスンプランの練り直しも子供のクラスに比べて楽)、夕食をとって入浴を済ませると、同じく新人研修に来ている外国人講師達と集まって盛り上がっていたり、さっさと寝たりして楽しそうでした。
というわけで、実践の現場に立つ前から子供英会話講師から見ると、大人を教える講師達は楽そうに見えたわけです。この持ち帰り残業の差は講師達が現場に立つようになると、より大きくなっていきます。

子供専門で教えることそのものだけでなく、付随する作業も大変

子供英会話講師はもって三年かな、と思う理由 - Inside the gate」という記事で、子供英会話講師がなぜ常に時間に追われているのか、ざっと書きました。

  • レッスンのプランを立て、副教材を作る。
  • 連絡帳を書く。
  • 生徒一人一人のレッスンの成果をレコードに記録し、いつでも引き継ぎできるようにしておく。
  • 営業の電話をする

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大人と違って子供は正直です。レッスンがつまらなければ「面白くなーい」と叫んだり、ひっくり返ったりします。ですから子供達の関心をひきつけたままレッスンをするために、綿密なレッスンプランや彼らの興味を引き出す小道具(副教材作り)は当然必要です。そしてプランどおりに行かないのが子供相手のレッスンの常・・・・それでも柔軟にレッスンを進行できるだけのスキルも必要です。
上記の項目でピンク色のフォントで記述したものが、子供を教えるということに付随してくる作業の一部です。
連絡帳記入、生徒一人一人の上達振りの記録は「後でまとめて」と思って残すと大変なことになります。自分の記憶力を過信してはいけません。些細なことでも気がついた時に記入しておかないと「あの子、どこが上達したっけ・・・・」と後で頭を悩ませて書くことになり、それを担当生徒数分繰り返すわけですから、余計に時間をくってしまいます。

受講者=スポンサーじゃないから、子供英会話講師は大変なのです

連絡帳を書いているから営業の電話はいいよね、と怠けたくもなりますが、月に一度の営業の電話は必ずさせられていました。なぜかというと、スポンサーである父兄達により身近に感じてもらうためです。そうしないと、契約更新率に大きく影響してくるからです。
電話で直接話すことにより身近に感じてもらい、お子さんはこんなに上達してますよ~(実はそんなにしてないけど)とマメに報告しておくことによって、退会者を少しでも減らそうってわけです。
このマンスリーの電話なしに、たった年に一度「お母様、そろそろ来期のクラス編成を始める頃になりました。来年も更新ということでよろしいでしょうか?」と奇襲コールしても、契約更新に結びつきにくいんですよ。
その点大人を教える講師達は、受講者=スポンサーであることがほとんどですから、レッスンで毎回顔を会わせられるため電話や連絡帳によるフォローが必要ありません(上達やレッスン成果を記録する作業はあるだろうけど)。それに学生を教えていてスポンサーが親だとしても、もう更新する・しないの意思決定が自分でできるくらいの年齢に達しているはずです。
ですから社会人の生徒同様、レッスンの後にでも書類を渡して「じゃあこれ来週までもってきてね」と言って済ませることができますから、ティーチング以外の作業は子供専門の講師に比べてかなり少ないといえるでしょう。

大人を教えることならではの大変さ

大人は面白いプロップを作って興味も引かなくていいし、楽でいいよねと思われがちです。私も実際そう思っています。では大人を教えることならではの大変さとはどういった者でしょう?
それは面倒くさい生徒の存在です。人間の厄介さというものは、大人になると質が悪くなります。厄介な子供ってたかが知れてるじゃないですか。目の前に置くものは全て自分が手にとって遊びたがるとか、すぐ泣くとか、口が悪いとかそんなものです。
それに比べて大人の厄介さってセンシティブなケースが多い。例えばレッスンで二人一組でペアワークをやらせようとしますよね。すると医者はたまたま隣に座っていた女子高校生と組まされて腹を立てるのです。

「いいかい?僕は医者だよ?今は初級レベルにいるけど、ゆくゆくは論文を発表する練習として外国人講師のプライベートレッスンをとろうと思っているんだ。なのになぜ女子高校生と組ませるの?」

こうしてこの医師は、結局ペアワークを最後まで拒否し続けました。女子高校生の相手は講師がやったそうです。子供はこういうことは言いませんからね。ただ子供専門で教えている場合、親に面倒くさいのが多いのも事実ですから、子供専門だからといって面倒な大人と関わらなくてよいかというと、そうじゃないのです。レッスン内で関わらなくてもよいというだけで、やはり営業を中心とした父兄応対では絡みますよ。

関連記事:子供英会話レッスン用の副教材作りはこうして上手にさぼろう - Inside the gate