ベースで働いていた頃、日本人は品行方正というイメージをもたれているんだな、と感じることはたくさんありました。卑しい日本人客 - Inside the gate で書いたような日本人客に遭遇すると、アメリカ人やフィリピン人従業員達は皆こういうのです。
「日本人でああいうことする人、珍しいね」
彼女達がそういうほど、日本人客はきちんとしている人が多いというイメージがあるのです。だからこそ悪いことをすると目立つ。
私が両替所に入っていた日のことでした。出勤すると、朝番で入っていたフィリピン人従業員セシルがちょっと元気がなさそうでした。こういう時何があったのか、同じ仕事をしている者同士だいたい想像はつくものです。
「セシル・・・・自腹切ったんだね・・・・・」
するとセシルはぶつぶつ言い始めました。
「どう数えても両替用のファンドが100ドルあわない・・・数え間違いや、引き出しの上の方にはりついてないか探してみた。で、思い出したのがこの日本人。
最初は100ドルくださいって言って、その分の円を窓口に置いたの。で、私はそれを受け取った。その直後に『あ、やっぱり200ドルにしてください』て言ってきたから、私は200ドルあげたの。
それで私、うっかりしていてもう100ドル分の円をもらうの忘れちゃったのよ・・・・あぁぁぁぁーーーーーもう!!!!!」
そういってセシルが為替取引のログを指差しました。
そこに書いてあった日本人名を私も覚えておくようにしました。自分も同じ目に合う可能性があるからです。
でも何も自腹を切らなくてもいいでしょう?って思われた方もいらっしゃるでしょう。確かに自分が盗んだわけではないので、自腹を切る必要は本来はありません(お金を扱う従業員はカメラでモニタリングされています)。
だけど私達はもしもファンドが1ドルでも1円でも合わない場合、自腹を切ることを選んでいました。なぜならファンドに誤差が出るとレポートを提出しなくてはなりません(ライトな始末書のようなもの)。
そしてそのレポートは、各自の名前が書かれているファイルに入れられてしまいます。それが溜まるとレコードとして残り、基地内で異動の際に不利になるのです。だから皆、自腹を切って補填してレポートを提出しなくてもいいようにするわけです。これは私もトレーニングを受けてまず最初に教えてもらったことでした。
「もうこれは暗黙の了解のようなもので・・・」と。
そしてセシルが100ドルやられてしまってから一ヶ月ほど経ったある日、若い日本人女性客が両替所にやってきました。夕方のラッシュの始まる少し前のことでした。彼女は英語で「100ドルください」と言ってきました。
アクセントで日本人だとわかったので、私は日本語で「本日の円→ドルのレートは120円ですが、よろしいですか?」と聞きました。すると英語で" I don't care."という答えが返ってきました。意地でも日本語を喋ろうとしないこの客こそが、実は先日100ドル得をして帰っていった客でした。<続く>
◆こういう場合、I don't care. だと感じが悪いので、せめて( It ) Doesn't matter. あるいはThat's fine.と言うようにしましょう。