Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

このスキルは万国共通で通用する、と思うもの(2)

シリーズ(1)では「聞く力」について書きました。今回は「年上女性の余裕と包容力」です。

 ベースで働き始めた当時の基本給は、社会人になってから一番薄給でしたが、お金をおろしにATMに立ち寄った記憶がほとんどありません。その代わりにまと まったドルを持って、レートの良い日に円に替えることは多かったです。なぜなら月給には手をつけなくても、チップだけで十分いいお小遣いになったからです。 

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photo by Neeta Lind


Tip jarは置きにくい雰囲気だったので置かなかったのですが、私にチップを渡したいお客さんはそのjarを探してもないと "Are we allowed to tip?"(「チップはあげてもいいの?」)と聞いてきてくれました。
クレジットカードで支払われたチップに関しては、セールスの一部としてマネジャーにレポートしなくてはいけないのですが、その金額を見てマネジャーが「君、いったい何をやってこんなにもらっているの?」と聞いてきました。
カード支払い分だけでなく、「取っとけ」とキャッシュでもらっているチップも入れた金額を報告したら、どうなっていたことでしょう。「実は階段の裏で・・・・」という冗談を言っても笑ってもらえるはずはなかったので、そういう悪い冗談は言いませんでしたが。
毎回決まってチップをくれるお客さんの多くは、なぜかお金を一番持っていないはずの若い米兵達でした。そう、私は既に、彼らから見ると母のような存在になっていたのです。だから気に入られた。

気に入られた理由。それは喋り過ぎないから

もうぴちぴちの若い女の子とは同じ土俵には立っていないんだな、と改めて実感させられました。そして突然大勢息子ができたような、相撲部屋のおかみさんの心境になりました。すると気持ちに余裕ができるんですね。young stupid kidsが何をやってもいらっとせず、落ち着いて対応できる。けっガキどもが!という感じで。 多分私が気に入られたのは、静かだからでしょう。
彼らが喋り終わるまで、絶対に喋らない。つっこみもしない。今つっこんだら超面白いだろうな、というセリフがあっても言わない。若い女の子達は「私が、私が」と話したがるからこうはいきません。
そして彼らの話に耳を傾けて、エゴをくすぐるような簡潔なフォローをする。仲良くなって慣れてきたら、新たな刺激のためにリスクを伴う返しも混ぜてみる。
会いに来てくれる子達には楽しんで欲しかったので、英語の勉強もかなりしましたが、反射神経だけは現場でしか鍛えられません。何か言われたら、彼が欲しがっている言葉を返すという反射神経。
こうして仲良くなってくると、やつらは店外デートを望みます。

「ねえ、今日何時に上がるの?一杯くらいなら旦那も何もいわないよね?」

想像してみてください。私と若い米兵が、私の仕事が引けた後におちあう姿。場末のスナックのホステスと若いチンピラの逢瀬みたいじゃありませんか。
だけど皆、自分の話を聞いて欲しいし、腹の底から笑いたいのです。心の隙間を埋めて欲しいと思う時もあるのでしょう。地味顔のぼけえっとした日本人が隠し持っている「余裕」と「包容力」という武器は、若い米兵達には有効だったようです。

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