横須賀の一時代の終わりです。
珈琲と紅茶の専門店・茶豆湯が閉店しました。50年の歴史に幕を閉じる前に最後の珈琲をいただいてきました。
茶豆湯の店内はやはり閉店の知らせを風の噂で聞いた人達で混みあっていました。
客の年齢、性別、国籍も様々でした。
さよならしに来れなかった人達だっているはずだ、と思いツイッター検索してみたら・・・・
多くの人に愛されていたことくらいは百も承知でしたが、なんとその中にあのベーグルカフェニコの店主(?)もいらして、昔茶豆湯でバイトをされていたことを知りました。
茶豆湯が閉店に至った経緯などはわかりませんが、ツイッターを見ていると素敵な純喫茶が結構閉店していくんですよね。採算がとれなくなってきているのでしょうか・・・。
一か月に一度か二度しか行かないお店でしたが、その頻度にはわけがあります。
働いていると色々あるわけで、その色々に対する疲れを程よく溜めてからふっとここに立ち寄るのが私のセルフセラピーだったのです。ですから良いことが続いて元気な時は、当然このお店から足が遠のきます。
横須賀、特に本町や大滝町、米が浜には素敵な純喫茶がいくつかあります。皆それぞれ独自の魅力がありますが、その中でもこの茶豆湯を特に好んで通っていた理由は、「悩んでもしようがないことを抱えて入ってくる自分を受け止めてくれる空間である」ということでしょう。雰囲気も大好きで、居心地がよかった。
この雰囲気や居心地というのも、どこのお店に自分の求めるそれがあるのかというのも人それぞれ。茶豆湯に来ても「なんだか落ち着かない」「どうしてそこまで人気があるのかわからない」という人もいたはずです。だけど私のストライクゾーンのど真ん中でした。
おしぼりを渡す時にしても「おしぼりをどうぞ」とは言わず、静かに「どうぞ」とだけ言ってさっと手に乗せてくれる。おしぼりであることは見ればわかるからいちいち言わないところとか、細かいところなんだけどそういうところがすごく好きでした。
珈琲も美味しかった。どきどきしながらあのドアを開けた瞬間は今でも覚えています。純喫茶というのはお店をやっている側も相当こだわりがある分、ドアを開けた瞬間に客も品定めされているような気持ちになるものです。また店内の装飾からそのお店がどういうタイプの人間に集まってほしいのかすぐにわかってしまい、自分がそのタイプじゃないと申し訳なくなり、コーヒーを一杯さっさと飲んで出なくてはいけない気持ちにさせられるお店もあります。
だから初めて入る時は緊張するのですが、茶豆湯は開けた瞬間に「自分が入って行っても大丈夫」という感じがしたのです。そして通い続けるようになり、英会話レッスンもここでしていました。
レジです。お会計の時にバリスタの男性とちょっとした会話をするのも楽しかったです。生活感のない男性。この男性の客に対する距離感がすごくよかった。もしかするとその客に合わせて接し方も変えていたかもしれません。
夏はアイスドを好んでオーダーしていました。一人で行っても、夫と行っても、同僚、友人と行っても素晴らしい時間が過ごせた喫茶店です。こういうお店は夏に行く方が好きなんですよね。
アイスコーヒー飲む奴なんか本当の珈琲好きじゃない!って言われればそれまでなのですが、まあそういう人はアイスコーヒーのない国・おフランスへ旅立ってください。
とにかくあの氷がグラスにぶつかる時のからん、という夏の音っていうのかな。あれが他の席や自分の手元から聴こえてきて、季節の移ろいを感じられのですが、まるで昭和のまま時が止まったような空間で季節の変化=時間の流れを感じるという不思議な感じがたまらなかったのです。
その時間の質を考えると、このお店のドリンクやフードの値段は安いくらいでした。店内は時間帯によっては少し煙たかったけど、それでも通い続けたい、茶豆湯でなければならないという魅力がありました。
来年の夏はどこでくつろごうかなぁ。しばらくは静寂難民かな。
美味しいコーヒーとお喋り、そして心の平和をいただきました。本当にありがとうございました。寂しくなります。
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- 雨天の時こそ行きたい喫茶店 - Inside the gate (茶豆湯について書いた記事です)