Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

横須賀基地で働くうえで英語力よりも必要なもの


横須賀基地という閉ざされた村の中ですいすい泳いでいくことと、日本の超ドメスティックな企業の人間関係の中でうまくやっていくことで大きく異なる点と言えば語学の壁です。この壁を取り払って周囲とうまくやっていくためにやはり英語力は確かに役に立ちました。ないよりはあった方がぜっったいによい。だけど英語力そのものよりも、その英語力を臨機応変に使えるかどうかの方が実は大切だったのです。出し惜しみも含め、どう使うか。
武器として使いこなすのか、あるいは諸刃の剣にしてしまうのか・・・。

Sword


従業員日本人、アメリカ人、フィリピン人従業員を中心に、欧州、南米、アジアからの出稼ぎ労働者達がともに働く環境では、表向きの公用語は英語と日本語、陰ではタガログ語が最も幅を利かせています。
在日米軍基地ですから、募集がかかっている仕事のほとんどが応募資格に英語力要とありますが、日本語力は必ずしも問われるとは限りません。接客業がよい例ですね。想定顧客は米軍関係者ですから当然でしょう。
下の図で言うとh.の条件が含まれていない空席に、フィリピン人をはじめとする多くの出稼ぎ労働者達が応募します。

f:id:usmilitarybase:20170205010153j:plain

ベースの外だと日本語の会話、読み書きができないとそもそも門前払いを喰らってしまう出稼ぎ労働者達も、ベースの中ならこのように日本語力不問の仕事は探せばありますし、正職員になれば賞与や各種手当もつきます。それにベースの外のこてこての日本人社会よりはベースの中の方が彼らも気楽でしょう。
よくいえばインターナショナルな環境、はっきりいえば魑魅魍魎の集う狭い世界で彼らと時に衝突し、そしてそういうものを乗り越えて歩み寄ってうまくやるわけですが、この衝突した時に英語力が役に立ちました。

英語力は人間力がないと意味がないし使いこなせない

どういう風に役に立ったかというと、彼らを論破するためではありません。どこの国の人間であれ、相手が感情的になっている時に正論を語っても無意味です。やるべきことは「こいつを敵にしたらまずい」と思わせること。これは衝突したその時にすることではなく、

  1. 人間力
  2. 英語力
  3. 日頃の行いの積み重ね

がものを言います。1.の人間力ですが、従業員同士が衝突した場合、どちらか一方が幹部にチクることが多々あります。よく「先にレポートした方が圧倒的に有利」と聞きましたが、私は衝突して仮に先にレポートされても不利にならない自信はありました。
「もしマリアのことを幹部に悪く言っても、幹部は『まさかマリアはそんなことしないだろう』と思うだろうし(1.人間力)、後からマリアが怒り狂ってオフィスに行って状況説明したら、あの英語なら衝突した背景もわかりやすく説明されてしまうだろうし(2.英語力)、感情的にならずに理路整然と話すだろうからチクりに行くだけ無駄だな」
自分でいうのもなんですが、私の同僚達は私をこういう風に見ていました。ですからチクられたのは一回だけです(相手は変人で、消えていきました)。幹部や同僚達に信頼してもらえるように普段から人に親切に、誠実に接し、くだらないゴシップに食いついて広めたりせず、淡々と自分の仕事をすることはとても大切です。要するに弱みを握らせないということ。どこを切り取ってもまっさらな白い状態でいること(3.日頃の行いの積み重ね)。その代り同僚達の弱みはどんどん握ること(笑)。

ただのいい人だと思われることほど損なことはない

私はこの弱みを握っていることを時々誇示するようにしていました。日本人、外国人問わずトラブルメーカーはいます。そういう人が絡んできたら無言で薄笑いを浮かべ、相手の目をじっと見つめるのです。

「あなたが何をやったのか、私が知っているのを忘れたの?」

Secrets

その無言のメッセージを受け取ったトラブルメーカーは、すぐさまおとなしくなります。私はこういう風に弱みを握るために、普段から地味な活動をして静かに切り札を集め続けていました。手持ちのカードの威力を把握し、上手にちらつかせるのです。
ふざけるなよ、なめるなよ、という意思表示は大切です。これはベースの外でも中でも同じですね。Stop being a pushover.

幹部がまともなアメリカ人じゃない場合

もしも今あなたが横須賀基地で働いていて、幹部がまともなアメリカ人以外の場合大変だろうなぁと思いますよ。ご愁傷様です。ではまともなアメリカ人以外誰が幹部になれるのかというと

  1. まともじゃないアメリカ人
  2. 現役・退役軍人の扶養家族(配偶者)

です。要するにUS military dependent ID holderということ。このIDを持っていて学歴や実務経験等の資格要件を満たしていれば、非アメリカ人でも幹部になれるかもしれないというわけです。あとはGSの配偶者もそうかな。そこらへんは不明です。ただし競争率が高いうえバックグラウンドチェックも厳しいです。
まあそんなわけなので私もあなたのボスになる日がくるかもしれませんが、私が言いたいのはそんなことではありません。
横須賀基地ではフィリピン人が幹部になってしまった場合(時々あることです)、そのコマンドや施設が完全にフィリピン人贔屓になりますから、あなたがどんなに英語が流暢であろうと、人望が厚かろうとまったく無意味になります。その前にまず採用されないし。あ、でもどこぞの施設のフィリピン人幹部、異動させられましたね♪
英語のことについてまだまだ書きたいことがありましたが、それはまた他の記事で書きます。

関連記事