日系企業で働いていた頃の、ある真夏日のこと。
PCの画面を見ていても、もう脳がこれ以上働かないというところまできていました。そして帰宅したら楽しむ一杯のことを思いだし、隣の席の女性に「あ、私、今朝家を出てくる前にグラス冷やしてくるのを忘れてしまいました」と言いました。
1時間半かけて通っていた仕事から帰ってくると、夫に帰宅の挨拶もせず荷物を置いてさっさとキッチンに直行し、きんきんに冷えたグラスに注いで楽しむビールの美味しさは格別でした。
隣の席の同僚女性もこの帰宅直後の一杯を習慣にしていた人だったので「私はちゃんとグラスを冷やしてきましたよ。ぐふふふふ」という答えが返ってきましたが、このやりとりを聞いていた部長代理がこういったのです。
「君達さ~、そういうこと言ってるとモテないよ」
おまえみたいな男にモテなくても結構、と思いつつ、確かに女性は晩酌という言葉を使わないなと思いました。
まあ私も、男に「自分が女だったらデートにはナチュラルメイクで白のニットワンピを着てく。料理は率先して取り分ける。酒はあまり飲まない。あと男の半歩後ろを歩く。これやればモテるのにな~」とか言われたら、「おまえにモテなくて結構!!!」と釘バットでボコボコにします。
— 龍堂薫子 (@ryudokaoruko) 2017年4月20日
実際にこういう装いや行動をしてみて、それに惹かれるような男に興味が持てない女はどうすればいいの?こんな男と結婚したら妻じゃなくてお手伝いさんになっちゃうんですよ?
話を晩酌に戻すと、股を広げてぷはぁ~ってやってるわけじゃないんだし、帰宅後の一杯くらいよくない?とも思いましたよ。After work cocktailならお洒落でよいのでしょうけど、私はそういうものを飲むのに一人でふらっと立ち寄れるようなバーがありませんでした。
アメリカ人男性と結婚してよかったと思うこと
それは需要と供給が一致しているということ。私が持たない類の女子力を求めてきません。例えば・・・
夫婦で一緒に居酒屋に行き、夫が「僕はいいや」と言った種類の焼き鳥を自分だけ頼んだとしましょう。それが運ばれてきて夫が「やっぱり美味しそうだな」と思った時のことまで考えて、念のために鶏肉を串から外せるのが日本で評価されるであろう女子力。でも私の夫だけでなくアメリカ人男性達はまったくそういうものを評価しません。押しつけがましい甲斐甲斐しさに高値をつけてもらえるのは日本の恋愛市場だけ。
「食べたかったら自分からちゃんといってくれるし、食べたかったら同じものをもう一本頼めばいいだけ。串に刺さっている状態の方が焼き鳥として美味しそうだし」
気楽なもんです。男女問わず日本人と一緒に時間を過ごす場合、相手がはっきりと口に出さなくてもこちらで察して動いた方がよいことが多すぎるのです。そして動きはダイナミックに!わかりやすく!=わかりやすい甲斐甲斐しさが求められる。さりげない気づかいにいかに気づいてもらうか、みたいないやらしさが苦手です。私はそういうものを提供できないし気が利く女アピールもしたくないので、日本人男性ウケを狙うのをやめてよかった。
じゃあ夫から需要があり、私が供給できるものとは?それはユーモアのセンスとアメリカ人のsarcasm(皮肉)を理解できること。私が持っているわかりにくい女子力は喜んでくれる。
お互いの笑いのツボを知るまでに時間はかかりましたが、私が供給したいと思うものが、たまたま相手が求めているものと一致するとやはり嬉しいです。
ここ日本では、面白いことが言える女はウケなくて、男性が言ったたいして面白くもないジョークに「うふふふふ」と笑ってあげられる女がウケるということは若い頃に学習しました。
その型に自分を無理やりはめ込もうとして、実際にはめてみたら確かに結果はついてきましたが、ちっとも幸せじゃなかった。「つまらなくて死にそうだ」そう思う日々を悶々と続けた後、型から飛び出して、二度とこの型の中に戻ることはないなと思いました。
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