Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

見ていてざまあみろと思った復讐映画


エンディングが好きじゃない、という声はよく聞かれますが、まあそこは除くとして私は「完全なる報復」という映画が好きです。

目の前で自分の妻が凌辱され殺された男の心の傷と怒り

強盗二人が主人公クライドの家に押し入って、クライドと妻を刺して縛り上げて、身体の自由を奪うところから始まります(このシーンを見ていて、銃を護身用に持ちたくなる人の気持ちがわかった)。
そのうちの凶悪な方・ダービーが、共に押し入った男が制止するのも聞かず、クライドの妻を彼の目の前で犯そうとするのですが、踊り場に立ち尽くすクライドの幼い娘に気づいてしまうのです。
ダービーはクライドの妻から身体を離すと、その娘を抱きかかえて二階に上がってしまうのですが、そこで夫が私に気を使って早送りしてしまいました。 なんとなく私も「いやだな・・・」と思い、その日はその続きを見なかったのです。
そして後日一人になった時に気が変わって最初からすべて見たのですが、娘と妻が乱暴されるシーンはありませんでした。そのシーンがなかったからこそ、私はクライドが見た生き地獄を自分の頭の中で好きなように描くことができたのです。

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(父親クライドを演じたジェラード・バトラー)

二階から聞こえてくる我が子が泣き叫ぶ声。そしてその声がついに聞こえなくなった時、我が子が苦しみから解放されて、それと同時に自分が愛する者を奪われたことを知ったのではないか、とか。
そしておそらく二階から降りてきたダービーは、失血死しそうなクライドの妻を彼の目の前で犯したのではないか・・・・。あえて残酷なシーンがなかったことによって、観る者はいかようにも想像できたわけです。

愛する家族を奪われた。法で裁き、罰するには限界があったから、自ら犯人を罰した男

復讐ですが、さすがは知能犯!最初は自分の愛する妻と娘の命を奪った強盗二人をターゲットにしますが、個人攻撃はこれでおしまいです。
よく「許すことで自分も楽になる」といいますが、私は許されるべきでない人間もいると思います。私はこのうちの一人が許されることなく、凄惨な拷問を受けて亡くなったのを見て、当然の報いだなと思いました。

"You can't move, but you can feel everything."

クライドにこう言われた時のダービー、震え上がっただろうな。しかもダービーが気絶しないように、アドレナリンを時折打つという用意周到ぶり。クライドは淡々とこういうことをするけど、憎しみや怒りの強さが伝わってきます。

その後クライドの標的となるのは、人というよりも司法そのもの。弁護士、重罪を犯した者を裁くことよりも、自分達の手柄=有罪判決率を優先した検察官、そして彼らのいいように言いくるめられていることすら気がつかない愚かな裁判官。彼ら全員がターゲット。
その事件を担当した自分の身にも確実に危険が迫っていることを知りながら、自分自身も妻と娘を持つという、皮肉にもクライドと同じ家族構成の検察官ニックは、クライドの抱える行き場のない怒り、そしてそれを抱えながら生きる苦しみを父親として、夫として、少しずつ理解するようになるのです。

最後に独房の中で、娘が作ってくれたブレスレットを握りしめるクライド。この先は書かないことにしましょう。

完全なる報復(字幕版)

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