Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

なぜニコラス・スパークスの本は読まれるのか

登場人物達はあまりにもご都合主義。

朴訥としているけれど、温かい心の持ち主である青年。
その青年が恋に落ちるのは、ちゃんと貞操観念があって、飾らないのになぜだか人目を引くナチュラル・ビューティー。おまけに性格までよい。

恋愛小説の名手、ニコラス・スパークスの書く小説に出てくる登場人物達はたいていそんな感じです。女性主人公はたいてい男性著者の好みが反映されますから、おそらくスパークス氏の好みもそんな感じなのでしょう。
で、マンネリのようでありながら、引き込まれてしまうのがスパークス氏の作品です。なぜ彼の作品は売れるのでしょうか?

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(アメリカの書籍って平積みされるレベルのものはどれも#1 NEW YORK TIMES BEST SELLERって書いてありますよね・・・・)

女目線で書かれている→メルヘンな女性ファンの心をとらえて離さない

著者は男性ですが、なぜか女性の視点から書かれているんですね。女心をよくわかってくれるゲイの男友達的な温かさを感じる文章です。女性が共感しやすく、逆に男性が読んだら(・・・といっても、男性読者はほとんどいないでしょう)「こういう男が存在するのは、恋愛小説の中だけですから。僕達にこれを求めないでね」と言いたくなるようなセリフや描写の連続です。例えばこんな感じ。

I marveled at the easy way Savannah showed her emotions and the tenderness of her expression as I told her about my dad.
When she kissed me afterward, I tasted the sweetness of her breath. I reached for her hand.

"I'm going to marry you one day, you know."
"Is that a promise?"
"If you want it to be."

(Dear Johnより引用)


うっわー臭いわーと思ってしまうのは、私が歳をとってしまった証拠でしょう。
いや、年齢は関係ないですね。だって、休暇を終えて駐屯地のドイツに戻っていくJohnに「機内で暇つぶしに読んでね」と、Savannahが渡した手紙には「満月の時期の最初の夜は、月を見上げて私のことを思ってください」(寒)って書いてあるんですけど、私は自分がSavannahの年齢(21歳かな)の時、こういうことを書こうと思いませんでしたからね。
それからSavannahからJohnへの別れの手紙も超女目線なんですよ。とにかく長い!別れようとしている人間にそんな長いもん書くなよ!
「こんな別れ方をする私だけど、いい人、いい女だったと思われたい」という利己的な考えが手紙の節々から感じられて、背中がぞぞぉっとしました。私だったら「あの女最低だな!」と思われた方が気が楽だけどな。
まあ、こんな風につっこみたくなるんだけど、読んでしまうですねぇ・・・。

なんだかんだ言って刺さる

私はこの作品を読んで楽しむには歳をとりすぎています。アメリカではおそらく10代後半~20代半ばくらいの女性が読んではまるのが、スパークス氏の作品ではないでしょうか。
だけどスパークスが描く心情の揺れ情景の描写の細かさ・的確さ・美しさは素晴らしい!粗末な家に自閉症を患う父親と二人で暮らした、少年時代のJohnの憤りとか、がつんと来るんですよ。貧乏で鬱々とした様子の描写なんて、その家の様子が目に見えてくるようです。

Abandoned Old Home

だから私はニコラス・スパークス氏の作品は、最低でも二回読みます。なぜ二回なのかはまた別の記事で書きます。

エンターテイメントに徹している

読みだしてすぐにスパークス氏の「読者の時間を無駄にしません」という囁きが聞こえてきそう。といいますのも、よい意味でpredictable(展開が予想できる)なのです。
例えばDear Johnなら、JohnとSavannahが恋に落ちるのは読んでいてすぐにわかるんだけど、Savannahの幼馴染で、同性から見てもいいやつのTimを早めの段階で登場させ、伏線を張る。これが伏線というよりは、もうばればれなんだけど、それでも読み続けてしまうんですよ。「スパークス氏は読者を裏切らない」と期待していいのです。朝吹真理子さんの「きことわ」を読み終えた時のあの「で、なんだったんだろう・・・・」「金はもういいから時間を返せ」という虚しさを味わうことは、絶対にないのです。

Dear John

その他おすすめの洋書

      1. Emily Giffin著"Something Borrowed"はより口語的で展開も早いので読みやすいけど、ちょっと軽すぎるかなぁという感じ。女子トーク特有の浅さを英語で読む感じ。だからこそ洋書は初めてという人にはおすすめです。

    1. The Namesake (ジュンパ・ラヒリ著)
      もしも私が大人を対象としたリーディングのクラスに参加するとしたら、これが教科書であってほしい。この一冊についてディスカッションができる仲間が欲しいです。

英語力も必要ですが、この作品を堪能できた人となら、ディスカッションを通じて刺激を与えあえると思うから。
インドからアメリカに移民した両親。アメリカで生まれ、アメリカ人として育った子供達は、両親の努力の甲斐なく、自分達のルーツに興味も誇りもありません。恋人も非ヒンズー教徒。親子なのに、わかりあえない。
TOEIC800点くらいの方におすすめですが、映画を見てストーリーをつかんでから原作を読めば、800点に届かない人でもとっつきやすいと思います。


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