日記ブログって面白くないですよね。知らない他人の日常って自分にとっては本当にどうでもいいじゃないですか。
だけどあなたの知らない他人が
- あなたの想像のつかないような場所に住んでいて
- その人の「日常」があなたにとっての「非日常」であったり「非常事態が日常的」
だったら日記ブログでもぐいぐい引き込まれて読んでしまいませんか?
「米軍の侵攻が始まったバグダッドに暮らすイラク人青年像」を裏切る著者
著者は裏切ったつもりなんてこれっぽっちもないでしょうし、「きっとバグダッドに暮らす人達は日々戦火に怯え、眉間に皺が刻まれるほどの苦悩を抱えて生きているんだ」と世界中から決めつけられることが迷惑だったかもしれません。
だけど欧米や日本のメディアが伝えるアラブ社会の側面っていうのは、そういうものばかりに偏りがちじゃないですか。でも本書から見えてくるイラク人(というか著者のパックス氏)は違うのです。
「万が一アラブ世界に興味を持ってくれる人のために、自分が世俗的な変態アラブ人ブロッガー代表になることにした」
実際に読んでみても変態だとは思いませんが、政治的なメッセージも肩肘張っておらず、どこかこうユーモアがあるのです。そんなブログが書籍化されたのが上で紹介している「サラーム・パックス―バグダッドからの日記」です。
読んですぐに著者が同性愛者であることがわかるのですが、僕は同性愛者ですと書いているのではなく、それを匂わせる書き方もどこかユーモラス且つシャープなのです。だけど嫌味っぽくなくてどちらかといえば痛快。
「ジャック、きみがぼくの考えを理解してくれますように。ぼくらはただ、アメリカ政府の動機を信用していないだけだ。もし、アメリカ政府がイラクと戦争をするなら、それは愛と平和のために戦ってくれるからだなんて思う程、イラク人はお人よしじゃない。その戦争の副産物としてでさえ、平和と自由がもたらされるとは思えないし」
こういうことが読めるのが個人ブログの良さなんじゃないかなぁ。
それは自分にしか書くことができないもの?
それはウェブでシェアする価値があるもの?
自分が記事を書く時に、そんなことを考えてみるようにしようと思いました。
◆パックス氏のツイッター Salam Pax (@Salam) | Twitter
◆もうブログは運営されていないようです Salam Pax
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