ある居酒屋に予約の電話を入れた時のお話です。
そこの店はテーブル席よりもカウンターの居心地がすごくいいんですね。設計や照明、使われている素材も居心地の良さを作っているのだろうけど、やはりそのカウンターの向こうで魚をさばきながら、お客の相手をする店主の人柄によるものが大きいのだろうと思っていました。
カップル、友達同士、同僚、親子、お一人様。どんな人でも温かく迎えられている感じがするのです。
私はそのカウンターを、金曜日の夜7時半から二名で予約が入れられるかどうか確認するために、電話をしました。 電話をした時に出たのが店主だったので、自分の名字は出しませんでした。彼の人柄を考えると、私達夫婦が常連だから、ただでさえ混み合う曜日の中途半端な時間帯にたった二名のため、しかも大人気のカウンター席でも、無理をしてでも予約を入れさせてくれるだろう思ったからです。
すると店主は人数と日時をメモしながら少し黙り込むと「あれ?この声はもしかしてあべさん?」と言ったのです。
実際に私と会って話したことがある人はご存じのとおり、私の声は低いうえに鼻にかかったような声という、女性としては好ましくない特徴があります。だから店主はすぐにわかったんですね。
「そうです・・・ばれましたか」と私が言うと店主は「なーんだ水臭いなぁ。最初から名乗ってくれればすぐに予約入れるのに!」と言って、笑いながら予約内容の復唱をしました。
金曜日の夜、店に着くと既に混んでいて、その中で10席あるカウンター席の中でも一番落ち着く私達のお気に入りの席だけがぽっかりと空いていました。 食事を終えて夫が店主にチップを渡していると、隣に座っていたサラリーマン達が「やっぱ外国人はチップ払うのか~」と言ったのですが、別に外国人じゃなくても、無理なお願いをした時や気持ちよかったサービスに対する感謝は、私達日本人もお金で表してよいと思うのです。
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