最初に断っておきます。状況説明が長くなります。
ベースではオープンゲートという日が年に二回だか三回あって、その日はゲートパス(通行証)なしの一般の人も入場が許可されて、治外法権の領域であるベースの中の様子を見ることができる日です。その日は多くの施設が出店し、本場のジャンクフードが食べたい!という日本人が列を成します。
ある年のオープンゲートの日のことです。その日はゲートが閉鎖されてもおかしくないほどの悪天候になると予想されていて、出店すら危ぶまれていましたが、準備時間になってもまだ天候が乱れていないということから、出店に至りました。
ところがオープンベースのイベント開始のためにゲートを開放してまもなく、天候は急に悪化しました。 「これじゃあもう後片付けの準備を始めた方が良さそうだね」などとスタッフ同士で話していましたが、ディレクターからは営業時間短縮の指示が待てど暮らせど来ません。そして驚いたことに、対岸の三笠公園の歩道を見ると、雨具にすっぽりと身を包んだ日本人達がゲートに向かって歩いてくる様子が見えました。
その数は100人/hくらいだったと記憶しています。 そして暴風雨の中テントの下のテーブル席を競いあうように、チリチーズドッグやハンバーガーに食らいつく日本人達の姿。
小さな子供の「疲れたよー!」という声があちらこちらから聞こえてきます。まさかあのくらい小さい子が自分の意思でこの天候の中オープンベースにやってくるとは思えないので、大人の都合で引き回されているだけでしょう。
そこまでしてベースのジャンクフードが食べたかったのか
その様子は日本が経済的先進国であることが信じられないような、なんというか、難民キャンプを見ているようでした。従業員達は皆「この天候の中よく来るよなあ」「ほんと物好きもいるもんだよなあ」と口々に言っていました。
仮に「そりゃあなた達は日頃からこういう食べ物に囲まれているから珍しくもなんともないでしょうけど、私達にはこんな時くらいしかチャンスがないのよ。だから雨が降っても槍が降っても来たかったの!」と言われたとしましょう。
だけど私達は皆、自分が従業員ではなく一般客だったとしても、この天候の中なら絶対来なかったと思いました。それほどの悪天候だったのです。
風雨が激しくなる中、一向に減らない対岸からやってくる一般客の数を見て、私がぽつりと「日本人ってほんとすごいなあ」と言ったら、たまたま隣にいたボス(アメリカ人)がすごいという単語だけ聞き取ったようでした。そしてこういいました。
「すごいんじゃないよ。クレイジーなんだよ」
そして同様に呆れたフィリピン人従業員がボスに続いてこういいました。
「すごいんじゃないよ。バカなんだよ。おかしいよ」
クレイジーと言われてもバカと言われても、何も言い返せなかった私も日本人です。自分も彼らと同じくらい呆れていたから。すごいという言葉は悪い意味でも使うんですよ、などと補足する気力もなければ、あちらにもそれを学ぼうという余裕もないほどの一日でした。
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