ベースで働いてアメリカ人達を接客していると、オフベースでの接客とはまた違ったストレスを感じました。私が勤務していた場所の客層が悪かったからというのもありますが、とにかくバカが多い。
「てめえら!!!」と胸倉をつかみそうになったことも一度や二度ではありません。だけどその度にアメリカ人の友人の言葉を思い出すのです。
「まりあ、あなたが日々出会うアメリカ人達を一般的なアメリカ人だと思わないでね。もっとまともなアメリカ人はいっぱいいるの」
アメリカの高校を卒業しても経済的な事情などから大学進学できず、かといって働く場所もない若者があらゆる福利厚生を目当てに入隊し、日本にやってくるわけですから、彼らを見て「アメリカ人ってやつは」と判断するのは確かに間違えています。
だけどバカな客の中で、愛すべき良質のバカが大勢いたのも事実です。あの時代にツイッターをやっていたら、私は間違えなく彼らを堂々と動画におさめ、彼らの許可のもと拡散していたことでしょう。本人達は無自覚でも見ている者まで笑顔にしてしまう、それが私の考える良質のバカです。
俺達今めっちゃバカなことやってます!ということを自分でツイートするような奴らは見ていてもちっとも面白くありませんが、ツイートすることもフェイスブックに投稿することも思いつかないくらい、自分達がやっていることに没頭している良質なバカは面白い。
ある夜私が両替所に据わっていると、酔っ払い始めた若い二人の兵士達が階段を上ってくるのが見えました。その頃はホリデーシーズンで、両替所の脇にもサンタクロースが飾られていました。Big, fat, and whiteと典型的なサンタのおじさん。
私に見られていることも気づかずに、彼らはかわるがわるお互いの写真を撮り始めました。それぞれがサンタの隣に立って、まるでラッパーのようなポーズを決めているのです。超真剣に。もちろんラッパー座りして撮影。
photo by zilverbat. (本人達ではありません)
サンタとのコントラストが面白すぎて、両替所の中でふいてしまいました。すると私の存在に気がついた米兵達がこちらを振り返り、つかつかと近づいてきました。私はてっきり「俺達を撮ってくれない?」と頼まれるものだとばかり思っていたのですが、窓口越しに「一緒に写らない?」と誘われました。
私は笑って「もし私も写るとしたら、あのポーズをとらなきゃ駄目なの?」と聞くと「もちろんだよ!」というのです。丁重にお断りしましたよ。彼らのフェイスブックで「日本人の女がこんなことしてました」っていうひとこととともに画像がアップされるのは目に見えていましたからね。
バカをやる時、真剣にバカになれる人に悪人はいない。私はそう思います。