Inside the gate

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【Review】GHQを動かした女 子爵夫人 鳥尾鶴代


「GHQを動かした女 子爵夫人 鳥尾鶴代」のプレビューをざっと投稿してから17日が経ち、ようやく読み終えました。

1.華族が廃止になってよかった

「ある華族の昭和史」を読んだ時にも感じたことなのですが、華族の桁違いの贅沢を支えていたのって結局平民でしょう?だけど華族達は自分達とそれより上に存在する皇族以外=平民は同じ人間だと思ってないんじゃないか?とすら思えるような選民意識みたいなものが感じられました。
しかもマダム鳥尾のご主人(旧華族)は、大学を卒業しても就職活動ができませんでした。「華族は働かなくてもよかった。そういう環境で育ったから、いざ華族が解体されても、自分はどう働いてよいのかわからない。だから就職活動もどうやったらいいかわからない」からです・・・・。華族が解体されて本当によかった。こんな人ばかりだったらきついわ。

2.アメリカ人は自分達の国にないからなのか、皇族・華族(欧州ならば王室・貴族)に弱い

ケーディス大佐とマダム鳥尾が出会ったのは、GHQを接待する席でした。接待要員に選ばれた女性達は若くてぴちぴちした美人というよりは、品の良さそうな妙齢のマダム達でした。
マダム鳥尾の画像を見てもわかるように(検索して見てね)、少なくとも現代の美人の基準で行くとそれほど美人ではありません。おそめママもそうでしたよね。どちらかというとのっぺりしていました。
だけどこの接待要員の女性達は、良家(旧華族)に嫁いだ女性達ばかりでした。もうそのステイタスが、GHQの人間達にとっては魅力的だったんじゃないかと思います。○○子爵夫人というステイタスだけでもう魅力三割増しですよ。

3.鳥尾夫人とケーディス大佐の間にあったものは、肉体的な結びつきというよりは、精神的な結びつき。それでも世間的には不倫の二文字で片付けられた

だけど子爵夫人というクラス感だって、慣れてしまえばもうそれまでです。その魔法が切れた後こそ本人の魅力がものを言います。そしてマダム鳥尾はケーディス大佐の心をつかんだまま離しませんでした。残念ながら、マダム鳥尾のどういうところがケーディス大佐を惹きつけてやまなかったのかは書かれていません。逆にマダムがケーディス大佐に惹かれた理由については詳しく読むことができます。
本書を読むまでは、二人の恋を一時の火遊びというか、戯れの恋だと思っていました。おそらく始まった頃はそんなものだったのでしょう。何不自由ないマダムが、権力のある男と楽しんだ束の間の情事というイメージ。だけど実際は違いました。

マダムは満たされていなかった。不自由していたんですよ。

満足に働かない夫。戦争中、戦後とお金も物資も不足していく中で、自分は疎開先で家族を食べさせるために駆けずり回っているのに、まったく手を差し伸べてくれることなく、気ままに暮らす元華族の夫・・・。
それに対してケーディス大佐は頼りがいがあったし、マダム鳥尾の子供達に対しても優しかった。夫として父親として、こんな素晴らしい男性とともに人生を歩むことができたらどんなに楽しいだろうと、マダム鳥尾の心はどんどんケーディス大佐に傾いていきます。
だけど一緒に幸せになることが不可能であることは、最初からわかっていたのです。時代に翻弄されながらも、お互いを最後まで思いやり続けた二人。成熟した大人の愛だと思いました。だけどそんなことを知っているのは本人達と、二人の別れを温かく見守った三井家の人々だけ。世間から見たらただの不倫です。でも自分達がわかっていればいいんですよね。どれだけ愛し合ったのか。

4.自由に生きるということは、それに伴う責任を負うことである

家庭があってもケーディス大佐と愛し合ったマダム鳥尾ですが、そういう風に生きるということは、それに伴う責任を負うことでもありました。マスコミの攻撃や胸の張り裂けるような別れ。こういうものを受け入れていく強さがないと、あのようには生きられなかったでしょう。

以上です。

当時の日本のまだまだ封建的な社会に、このような女性がいたということを知ることができただけでも、面白い一冊でした。

外部参考記事>>白洲次郎 VS ケーディス大佐 - かつて日本は美しかった

 

子爵夫人 鳥尾鶴代―GHQを動かした女


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