Inside the gate

米海軍横須賀基地でお仕事をしたいと思っている人達のためのサバイバルガイド。情報が古いということが玉に傷です。英語学習や異文化に関するエッセイも書いています。

「伝えたい、わかってほしい、誤解されたくない」という語学学習のモチベーション(1)


 スラブ系美女Kさんと一緒に働いていた頃、この人はいったいどうやって英語を学習したのだろうと不思議に思うことが何度もありました。
彼女の英語はスラブ系のアクセントこそ多少残っていましたが(このアクセントを失って欲しくないと思うアメリカ人男性は多いと思う)、「ああ、この人はもうアウトプットまでのプロセスが英語なんだろうな」という話し方をするのです。

伝わらない、わかってもらえない、誤解されてトラブルになった・・・それらの経験があってこそ、今の彼女がいる

こうすれば"You speak good English."の一段階上の英語を話せるようになる - Inside the gate」という記事でこんな風に書きました。

私はこのように日本語独特のニュアンスを訳そうとせず、頭の中を英英辞書状態にした方が、自然な英語が話せるようになると思います。
日本語独特のニュアンス語を丁寧に訳せる力も確かにすごいのですが(ただしビジネスのやりとりは国際交流ではなく、メインはビジネスですから、あまりニュアンス語は喜ばれない)、英語で話す時は「日本語→英語」の過程をスキップしていっきに英→英で考えるようにしてみたらよいと思います。


喜び、哀しみ、笑い、怒り・・・。
あなたが何かを強く感じて、それを表現したいと思った時に、まずは母国語で思い浮かびますよね。だけどKさんは英語の方が先に頭に浮かぶのです。それだけ語彙のストックがあるということ。
よく「ヨーロッパでは誰もが2,3ヶ国語話すのは珍しいことではない」といいますが、彼女はそういうことがあてはまらない国で幼少期を過ごした女性です。
そんな彼女がそのストックはどうやって積み重ねたの?と私は思い、まだ二人があまり親しくない時にたずねてみたところ、「中学と高校で習った。それだけ」と返って来ました。
ところが親しくなって二人で飲んだり、お互いの夫も連れ立ってダブルデートするようになった頃、私が何気なく「あなたは本当にネイティブスピーカーのように話すよね。語学習得が速い人っているけど、あなたもそういうタイプなのかな」と言ったところ、以前ボキャビルの秘訣を聞いた時とは違う答えが返って来ました。


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多感な時期にアメリカに移住。もともと短気なため、伝わらないということがフラストレーションになった


「中学の途中でアメリカに移住したの」


そう切り出すと、なぜ移住することになったのかという事情を語り始めました。年齢的にもちょうど難しい時期で、しかも彼女は他にも自分ではどうにもならない問題に巻き込まれていました。その問題を解決するために移住したとのことです。
そんな風に精神的に追い詰められた中でアメリカの学校に通い、言葉の壁があり授業にもついていけず、もともと短気なうえ勝気な性格であることから、自分の言いたいことが伝わらないということがものすごく強いフラストレーションに感じられたそうです。

http://www.flickr.com/photos/80653234@N00/7587865942

photo by DezCreates


伝わらない、わかってもらえない、誤解されてトラブルにつながった・・・。
お金でなく、心の痛みや葛藤を対価にしたレッスン料。これを支払って彼女は英語がうまくなったのです。
そして「こういうフラストレーションを解消できるのは自分しかいない」と思い、必死で予習・復習し、クラスメートからは「何を言っているのかわからない」とからかわれつつも、自分から話しかけるようにしたKさん。
高校に入る頃には、聞いたこともないようなスラングを除けば、日常会話にはほとんど不自由することがなくなっていました。

「私はこの国で生きていく。だったらその国の国民と同じくらい喋れないのはおかしい」

母国から離れていくつかの問題から解放され、アメリカでの生活に風穴すら見出し始めていたKさん。

「自分はずっとこの国で生きていくんだろうな」

そう考えることが多くなったあたりから、もっと英語を話せるようになりたいし、そうならなくてはいけないと思ったそうです。そしてそれは当然のことでした。
働くにしても何をするにしても、その国の言葉がネイティブスピーカー並みに話せることは必要資格の最低条件なのですから。そのハードルをクリアしないとその先に進めないシーンがたくさん出てくるのです。Kさんほど美しくても、美しさというパスポートだけでは入っていけないところもある。

美しいだけでなく、自立心が旺盛でタフなKさんですが「(そういう資質は)すべて母からのギフト;(ウィンク)」と言っていました。



愛と差別と嫉妬で鍛える英語

「英語が上手」と言われる日本人の英語が、文法的には正しいのに伝わりにくい理由

英語学習方法を提唱する日本人の人達=それなりの英語力を自負する人達のブログやツイッターを見ていると、時々その人達が英語で自分を表現されているのを目にします。
その文章を読んでいると、文法的には正しいし、日本人同士なら「ああ、こういうことがいいたいんだな」と推測もできます。だけどネイティブスピーカーには伝わらないだろうなと思う文章が多いことに気がつきます。
なぜなのかわかりますか?それはおそらく、彼らがフラストレーションを感じるほど揉まれたことがないからです。日本にいれば「英語が上手ですね」と言われるレベルの人達にとって、日本は心地のよいぬるま湯です。そしてそれは日本に暮らしていれば当然のことです。日本語を母国語とする国にいながらにして揉まれたい人、横須賀基地においでー(笑)。

だからおすすめしているヨーク水砂子さんの著書

「ステキな外国人に恋したら、英語がペラペラになりました。」を当ブログで紹介した理由は、ずばり著者、ヨーク水砂子氏が「伝わる英語を話している人」だと思ったからです。それから読者への愛を感じるんですよね。
ただし、ネイティブには伝わりやすいけど、ノン・ネイティブには伝わらないであろう表現が多そうなのも確かですが、それはノン・ネイティブの英語力次第。


Kさん登場記事


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