チップを稼ぎまくっていたアメリカ人従業員といえば・・・このブログのリピーターの方はもう想像がつくでしょう。はい、ご想像のとおりメンヘラアメリカンDさんです。
船という船が全て停泊していてベース上の人口が多い時期で、さらに週末などのかき入れ時は数時間で40ドルのチップを稼いでいたDさん。
「40ドル?それってたった5000円くらいでしょ」と思った方もいらっしゃるでしょう。確かに「これでタクシーに乗って帰りなさい」と言って万札を握らせてもらえるような高級ホステスさん達にしてみたらたいした金額ではありません。
だけどベースの飲食店、しかもウェイトスタッフではなくキャッシャーとして働いていたDさんの場合は話は別です。詳しい説明はまた後ほどしましょう。
photo by Phil Dowsing Creative
お客さんを笑わせたい。ただそれだけ
Dさんにはチップを稼ごうという欲がありませんでした。 ただ20ドルを超えた時点で「今夜は40ドルを目指すわ!」とゲーム感覚で楽しんでいたのです。だからチップ、チップ、とがつがつしている卑しい感じはまるでなくて、あったのは笑いに対する執着。
ですから一度ウケたセリフはずっと使いまわします。接客する相手は毎回変わるわけですから、同じセリフを使ってもばれませんよね。もうまるで下手なナンパ師みたいなものです。
例えばDさんがHow are you doing?とお客様に聞きます。するとお客様にもたいてい同じことを聞き返されるのですが、その時に目をきらきらさせながら"I'm jolly!"と答えたりすると、心の広いお客様ならそのテンションや流れにつきあってくれます(客につきあわせるってのもどうかと思いますけどね)。
そしてそこを切り口にして広がるスモールトーク。もちろん話が膨らまないお客さんもたくさんいます。Leave me alone.「ほうっておいてくれ」という空気をお客さんが出していても、Dさんはそれを読み取る力がありません。お客さんに自分の接客を楽しんで欲しくてがんがん責めるわけです。
そしてDさんは自分のネタがウケないとすぐに不機嫌になり、それを顔に出してしまいます。だから険悪な雰囲気になりますが、下手な鉄砲を数打てば、もちろんはずれもあるさくらいにしか思っていないのです。とにかくどんどん自分から話しかけるのです。すると「話していて楽しい子だな」「明るくていい子だな」と思うお客さんはチップをつけてくれるのです。
キャッシャーのチップはextra. ウェイトスタッフのようにexpectedではない
キャッシャーのチップについてDさんが働いていた場所の客単価は平均で6~7ドルくらいでした。となるとお客様がcharge tip(クレジットカードへの請求に加算させて支払うチップ)をつけるとしても1ドルくらいなんですよ。時々「いくら欲しい?」と聞いてくるお客さんもいますが、客単価が低ければcharge tipなんて1ドルとか2ドルつけばいいほうです。
しかも職種はキャッシャー。チップはextra(つけてもつけなくてもよい)であって、ウェイトスタッフやバーテンダーのようにexpected(常識的に考えてつけるものと期待されている)ではありません。
◆チップがexpectedと考えられている職種とそうでない職種>>横須賀基地のバーテンダーやウェイトスタッフが年間に稼ぐチップの額 - Inside the gate
そんな条件で稼いだ40ドルってすごいんですよ。シフトの間に1ドルx40人とか、2ドルx20人っていうことでしょう。彼女のギャグはくどいし寒いので、鉄砲が当たる率は高くはない。ってことは分母を大きくするわけです。滑ってもスルーされてもいい。だって彼女はお客様と話すことが楽しくてしかたがないのです。チップはそのおまけ。
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