接客業は楽しいことばかりではありません。嫌な事だってたくさんあるのは、どこの国で接客をしても同じ(日本人ほど細かくて面倒な客はいないでしょうけれど・・・)。
私がベースで接客業に就いてみて「いいなぁ」と思ったことの一つが、人々が笑いを大切にしているということです。大切にしているというか、より身近というのでしょうか。
客も店員も、何気ない会話の中に埋まっている笑いの種を発芽させるのが上手い
ベースでは会計時に、アメリカ人のお客様によくこんなことを聞かれます。
Do you take yen?` 「円は使える?」
Do you take cards?「カードは使える?」
ですから接客をしていればこれらには慣れているのですが、さすがにこれには笑ってしまいました。
Do you take monopoly money?
「モノポリー用のお金は使える?」
使えるわけねーだろ!!!!!!(モノポリーとはアメリカ発の有名なボードゲームです)
店員からもジョークが言いやすい空気
ある日お客様がレジにクレジットカードを忘れていかれました。そのお客様にそのことを電話で連絡をするとすぐに戻ってこられました。「ありがとう。助かったよ!」といわれたので、We bought a salmon fillet and a glass of white with your credit card. Was that ok? 「お客様のカードで、私達はサーモンフィレとグラスの白ワインを購入いたしました。問題はありませんか?」と冗談で聞くと、お客様は「そのくらいならいいよ!」と言って大爆笑されました。この一件以来、来店されるたびに会話が弾むようになりました。
もちろんアメリカ人の中にもできるだけ喋らずにとっとと用だけ済ませて立ち去りたいという人はたくさんいますし、そういう人にスモールトークをしようと押 し付けるのは、やられた側にしてみれば苦痛でしかありません。そういう人達は必要最低限のやりとりだけで済ませて差し上げるべきです。
ラストネームからファーストネームへ
それでは「アメリカ人は皆陽気で、いつもアメリカンジョークをかましていて、すぐにうちとけあえるんだー!」というとそうでもありません。
誰もがデーブ・スペクターさんみたいに常にジョークを言っているわけではありませんし(そもそもあれは彼が仕事で演じているキャラですしね)、日本人同様、一人一人心地よいと感じる心理的な距離感は異なります。
だけどその距離感が少し縮まったな、と感じる瞬間があります。それはお客様をファーストネームで呼ぶようになる時です。
米軍兵士のワーキング・ユニフォーム(ネイビーならばデジタル・キャミーね)の左胸部分には、その人の名字が刺繍されていて、兵士達は仲間同士ならば名字で呼び合い、上司とはランク+名字で呼び合います。
関連記事:ここまでコケにされても、きっと何も言えないネイビー - Inside the gate
ですから私達従業員もその刺繍を見てお客様の名字を覚えますが、お客様は私達をファーストネームで呼びます。
ある日ふとその常連さんに対し「ファーストネームなんだっけ?」と感じ、たずねてみると「マイク」と言われ(マイクいっぱいいるよね)、なんとなくその日からファーストネームで呼ぶようになるのです。Now we're on a first-name basis.(名前で呼び合っても失礼にならない程度の親しい関係)ってやつですね。
こういう風に距離感が縮まってくると、言えるジョークの幅が広くなります。例えばこんな感じです。
私:Hello. All we're serving right now is me. 「こんにちは。現在提供している商品は私だけです」
お客様:Ok, then I'll take that.「いいよ、じゃあそれをもらおう」
私:What kind of dipping sauce would you like?「ディッピングソースは何にされますか?」
お客様:You know what kind of sauce I like on you ;).「僕がどんなソースをつけて食べたいか知ってるでしょ(ウィンク)」
こういう風に返されると「負けた!」と思います。
仕事を終えてあとは帰宅するだけ、というお客様が特に食べたいものはなくても「ちょっと今日は嫌なことがあって・・・」と立ち寄って話してくれるようになると、嬉しいなぁと思いましたし、笑わせて送り出したいと思いました。笑いは大切ですよ。
関連記事